【個別インタビュー】 映画「オオカミ狩り」キム・ホンソン監督、ソ・イングクについて語る「一度沼にハマったら抜け出せないブラックホールのような魅力的な俳優」(画像提供:wowkorea)
【個別インタビュー】 映画「オオカミ狩り」キム・ホンソン監督、ソ・イングクについて語る「一度沼にハマったら抜け出せないブラックホールのような魅力的な俳優」(画像提供:wowkorea)
映画「メタモルフォーゼ/変身」、「共謀者」などを通じて“ジャンル映画のマスター”として地位を築いてきたキム・ホンソン監督の最新作「オオカミ狩り」が、4月7日(金)より日本全国で公開されることが決定した。本作はフィリピンに逃亡した極悪犯罪者を韓国に送還する護送船の中で繰り広げられる物語を描いたバイオレンス・サバイバル・アクション。映画公開に先駆け、キム・ホンソン監督のインタビューが行われ、撮影していて大変だったことや印象的なシーン、ソ・イングクの魅力などについて語ってもらった。

韓国映画「オオカミ狩り」のキャスト、公開日、あらすじ

本作は、韓国映画としてはポン・ジュノ監督の映画「グエムル-漢江の怪物-」以来16年ぶりに第47回トロント国際映画祭のミッドナイト・マッドネス部門に正式出品となったほか、第55回スペイン・シッチェス国際ファンタスティック映画祭コンペティション部門で審査委員特別賞・特殊効果賞を受賞するなど、各国のジャンル映画祭を席巻。徹底したゴア描写で話題の「『哭悲/THE SADNESS』に匹敵するほど血生臭い映画」と評されている。

劇中、第一級殺人の国際手配犯・ジョンドゥを演じるのは、8年ぶりの映画復帰作「パイプライン」でセクシーかつワイルドな魅力を開花させた盗油師役も記憶に新しいソ・イングク。全身にタトゥーを入れて大胆なイメージチェンジをはかり、海に浮かぶ監獄で反乱を主導する狂気に満ちた極悪非道な犯罪者を熱演。

ソ・イングクの作品をたくさん観ていた監督は、中でも「空から降る1億の星」が印象深かったと話す。

「ソ・イングクさんとはいつかご一緒したいと思っていた俳優さんでした。そして今回、ちょうどタイミングがうまく合ったと思います。わたしが書いたシナリオも気に入ってくれましたし。キャスティングというのは運命のようなもので、ちょうどソ・イングクさんも強烈なキャラクターを演じてみたいと思っていたところに今回の作品に出会えたようです。俳優の立場からしたら役柄の幅を広げることができ、映画の立場からしたら、これまでの作品とは異なる新鮮な印象を観客にもたらすことができる、お互いにとってウィンウィンになり得る作品になったと思います」

ナイフ使いの寡黙な犯罪者・ドイル役を演じたのは、ドラマ「ノクドゥ伝~花に降る月明り~」「サーチ ~運命の分岐点~」など主演ドラマを筆頭に目覚ましい活躍が続く次世代俳優のチャン・ドンユン。以前から注目していたという監督は、ドラマ「サーチ」でのチャン・ドンユンの演技が印象的だったそうだ。

「チャン・ドンユンさんの場合は、私は日頃から映画やドラマをたくさん観るのですが、1、2年前に彼が出ているドラマを見ていて、以前から目を付けていた俳優さんでした。そして今回の作品のドイルという役柄にぴったりな俳優さんだと思いました。まわりの人に聞いてみても、人柄的にも素晴らしいということで、もちろん演技ももともとうまい方なので、チャン・ドンユンさんにシナリオを渡してみたら、彼もちょうどスケジュールが合いました。俳優のスケジュールのタイミングが合うということはなかなか難しいことで、演技がうまい俳優さんはスケジュールがほぼ埋まっていて忙しいので、タイミングが合わなければできないんです。俳優のキャスティングというのは、映画にとって一番大事な部分だと思うんです。いろんなものがかみ合わなければならないのですが、そういったものがうまくぴったりとはまったので、運命のようなキャスティングだと思いました」

監督は悪役を演じたことのない俳優を求め、悪役に挑戦してみたいという意欲を見せていた俳優が運命のように出会い、今回の作品が出来上がった。監督は運命を感じたと同時にソ・イングクが悪役を引き受けてくれたことに感謝をしていると話していた。

「歌手としてのソ・イングク、これまで演じてきたラブストーリーやロマンチックコメディが好きなファンがたくさんいらっしゃるので、悪役というのは彼にとってものすごいチャレンジだったのではないかなと思いますし、今回の役を引き受けてくれてとても感謝しています。そして、彼は一言で言えばブラックホールのような人です。一度沼にハマったら抜けられなくなるくらい大変魅力的な俳優さんです。かわいさもあるし、とても男らしさもあって、すべてを兼ね備えている魅力的な俳優さんだと思います」

男性をもとりこにするソ・イングク。撮影しながら彼のどんな表情が印象的だったのかを聞いてみた。
「ソ・イングクさんは、四白眼という上下とも白目が出るような目の演技をうまく使ってくれたので、これまでに見せたことのない目の演技をしてくれて、とても印象的でした。それから好きなシーンはたくさんありますが、ソ・イングクさんの残虐なシーンです。これは1回のテイクでOKが出たシーンで、そのシーンを本当にうまく表現してくれました。驚くことなく、NGも出さずに見事に表現してくれたので、個人的に好きなシーンのうちの一つです」

残虐なシーンを平気で演じていることにも驚くが、ソ・イングクの分厚い肉体も印象的。これについて、監督は「基本的にはシナリオに書かれていることを元に俳優さんと話し合いながら、私の思っていることをお願いします。体作りについては、筋肉質で体を大きくするようにソ・イングクさんにお願いしたかったのですが、彼もちょうど同じ考えだったので良かったです」と撮影前から息はぴったりだった様子。
そして何よりも驚いたのが、全身に入れ墨が入った肉体だ。
「入れ墨については、タトゥーチームといろいろと悩みながら、提案をいただいたりして、昔ながらの入れ墨ではなく、最新の輝きがあるような入れ墨をしたいと思いました。体にはいろんな動物が刻まれているのですが、ジョンドゥは子どもの頃から入れ墨をしていて、その入れ墨というのは、お金を稼ぐ度に1つずつ増えていくものです。一度で刻まれたものではないので、動物の入れ墨がバラバラになって刻まれています。入れ墨については俳優さんにも了解を得なければならないので、ソ・イングクさんともいろいろ話し合い、彼からもアイディアを出してもらいながら作っていきました」

本作が作られることになったきっかけは、2017年にフィリピンへ逃亡した韓国人犯罪者47名の集団送還のニュースを見たこと。普段から“改造人間”というものに興味を持っていたことから、それを素材にして作り、完成までに4か月ほどかかったそうだ。そして、そこからシナリオを演者側に合わせて修正していったそうだ。

「役柄についてはシナリオにあるものを俳優を通して表現していくことになるので、俳優さんに合うように少し変えることもあります。ソ・イングクさんの普段の言葉遣いや仕草などに合わせて、撮影する前に修正していき、それをもとに演じてくれています。今回はジャンル映画なので、スケジュール通りに進めて編集を加えていく必要があったので、撮影現場で即興でせりふを作っていくということはほとんどありませんでした。感情表現についても事前に相談していきながら撮影していきます」

映画のポスターや場面写真を見る限り、キャストはほぼ血まみれ。目を覆うような惨劇なシーンが展開されていくのがわかる。実際に人を殺すわけではないが、狭い船上での殺し合いのシーンを撮影することは大変だったに違いない。

「大変だったことと気を遣ったことと一致しているのですが、それは“安全”でした。安全というのは肉体的な安全と精神的な安全を保つということでした。今回は、目を覆いたくなるような凄まじいシーンがたくさん出てくるので、俳優さんもスタッフたちも笑いながら楽しんで撮影をしていたものの、人が亡くなるシーンが出てくるので、精神的につらくなりかねないシーンがたくさんありました。でもここで少しでも気を緩めてしまうと、精神的にもダメージを負いかねないので、それをうまくコントロールしながら撮影していくことが大事なことでした。それから、アクションシーンでは、実際の船の中で撮影したのですが、けがをしてしまってはすべてが台無しになるので、『安全に』という言葉を一日に数十回言うほど、安全を重ねて撮影していきました。そんな風に撮影したので、とても苦労はしましたが、誰一人けがすることなく無事に撮影を終えることができたので、ご先祖様や神様に感謝しています」

ショッキングなシーンが続く中、現場では楽しい雰囲気のなか撮影されたそうだ。彼は「特にムードメーカーがいたわけではないのですが、みんなノリながら撮っていました。これは良いことか悪いことかわかりませんが、この映画は『韓国の映画史上最も残忍な映画』と韓国で言われていました。ですので、俳優にとってもスタッフにとっても、すべてが初めて撮るシーンが多かったんです。人を殺すシーンでも、ここまで表現するのかというくらいのものを表現していましたが、実際にしているわけではないので、新鮮なものということで楽しみながら、不思議がりながら笑って撮影していました。俳優さんも普段はロマンチックコメディのようなジャンルで演じている人たちなので、今回の映画に出演することで新しい演技に挑戦するという場でもありました。ですので、とても楽しく撮影していたと思います」と話し、「全般的に私の作品の撮影現場は楽しいんですよ。私一人でそう思っているだけかもしれませんが…」と付け加え「ハハハ」と笑顔で話してくれた。

“韓国の映画史上最も残忍な映画”を作った監督が普段どんな作品を観ているのかも気になって聞いてみると、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「アモーレス・ペロス」、フェルナンド・メイレレス監督の「シティ・オブ・ゴッド」、アントワン・フークア監督の「トレーニングデイ」といったサスペンス・アクションやピーター・チェルソム監督の「セレンディピティ~恋人たちのニューヨーク~」、デヴィッド・O・ラッセル監督の「世界に一つだけのプレイブック」といったロマンチックコメディが好きで、日本では「半沢直樹」と漫画の「キングダム」がお気に入りだそうだ。

ジャンルを問わず作品を観ている監督の今後の作品がどんなジャンルのものになるかも気になるところだが、彼は「最近はありがたいことに、海外の映画祭に行くことが多くなりました。アメリカで準備している作品があるので、いろいろなシナリオをもらって読んでいるのですが、そこからもいろいろなインスピレーションを受けています」と話した。

最後に、監督は「まずは映画を楽しんでいただければ幸いです。さまざまなキャラクターが登場し、多くの俳優の皆さんが最高の演技を見せてくれているので、俳優たちのシナジー効果を楽しんでくださればと思います。また、型破りなストーリー展開やハードボイルドなアクションをぜひ映画館に足を運んで観ていただければうれしいです」とアピール。
そして、「この中で伝えたかったことは、私たちは暴力的なことを目にしていて、暴力というのは人間の社会の中で繰り返し起きています。これ以上こういった暴力的なことが起きてほしくない、人間性を失うことなく暴力的な社会ではない社会になってほしい、人間が人間らしく人と触れ合っていける社会になってほしいという願いを持っています。そういったことを内面的に考えながら作っていきました。劇中の怪人“アルファ”は、舌が切り取られ、目も潰されて耳も切られています。なので、人間性を失った、人間性を喪失したものが具現化されたキャラクターとなっているのですが、“人間らしさを失わないでほしい”という思いを“アルファ”を通して描いています。そういったことも皆さんには感じとっていただけたら嬉しいです」と作品に込めた熱い想いを語った。

ソ・イングク主演映画「オオカミ狩り」は、4月7日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開!


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