ドラマ界は悲劇のどん底を突っ走る
ドラマ界は悲劇のどん底を突っ走る
テレビドラマ界は刺激的な方面に変化している。悲劇や不幸、不運のどん底を走る。出口のない行き止まりで主人公を追い詰め、緊張感を高める。

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 テレビ関係者からはこのような現象を置いて、つらい現実を反映しているとする声や、テレビ離れする視聴者を捉えるための苦肉の策だと弁解する声が聞かれる。

■テレビドラマ界は“復讐共和国”か=現在の韓国ドラマ界では“復讐劇”が溢れている。昨年、名作だと称されたSBSドラマ「追跡者THE CHASER」もやはり、復讐がメインであり、“ソン・ジュンギシンドローム”を生んだKBSドラマ「世界のどこにもいない優しい男」も復讐に身を捧げる男の話だった。また、昨年末に幕を下ろしたMBC「メイクィーン」とSBS「5本の指(邦題:蒼のピアニスト)」は復讐を前面に押し出した“どん底ドラマ”の代名詞となった。

 さらに、最近終了したMBCドラマ「会いたい」には、復讐心に精神病質者になってしまったキャラクターまで登場、現在放送中のSBSドラマ「野王」は愛を捧げた女性に裏切られた男の復讐劇だ。なお、主婦層を攻略する朝の連続ドラマや夕方放送する昼ドラマにおいては、復讐なしでは太刀打ちできない状況が昔から存在した。

 このような現状について心理学者や評論家たちは、経済的危機に伴う大韓民国の“怒りゲージ”上昇が理由だと解釈する。生きることがつらく、主観的な期待水準と現実的な達成水準との格差による不満の中で定義が喪失したと感じる人々が多くなり、ドラマの中でも怒りや復讐の心理を最大化した話が続いているというのだ。

 ドラマ「蒼のピアニスト」で悪女チェ・ヨンランを演じた女優チェ・シラは「これらの行動は人間チェ・シラとしては理解し難いが、世の中にはチェ・ヨンランのような人間もいるかもしれないと思った」と、ドラマのストーリーが現実を反映していると解析した。

■どんどん刺激的な設定に=SBSドラマ「野王」の2~4話は、19歳以上試聴可能という設定がなされた。深夜として分類される夜10時の放映ではあるが、地上波放送のドラマにR指定がつくことは異例的だ。1話では15歳以上試聴可能だった「野王」だが、殺人、死体遺棄に続きホストバーに集中的にスポットを当てながら、2~4話を19歳以上で放送するに至った。視聴者指定は放送曲が自主的に決定するものだが、想像を超える過激さから15歳以上の設定では消化できなかったのだ。

 少女に対する性暴力からはじまり、成功のために幼い娘と夫を捨てた女が登場し、校内暴力が殺人へと繋がり、麻薬中毒者まで登場させるドラマが相次ぎ、まるでテレビドラマは「誰がより刺激的なのか」を競争するかのように映ることもある。

 KBSメディアのチョン・ヘリョンドラマ本部長は「視聴者を獲得するため、ドラマの刺激の程度がどんどん強くなっている」とし、「過激さが増し、後発走者はより一層強いものを登場させなくてはならない状況に達した」と説明した。

■ジャンルの多様化、作品性で補完してこそ=富と権力のあらゆる蛮行を赤裸々に描いた「追跡者THE CHASER」もやはり、刺激性の程度で見ると最高点を取った。そのような作品が“名品ドラマ”と称されるのはなぜだろうか。

 韓国ドラマ「追跡者THE CHASER」のヒーロー、ソン・ヒョンジュは「『追跡者THE CHASER』は現実をそのまま持って来て映した。久々に見るまともで現実的なドラマ」と解析した。過激さのための刺激ではなく、劇的な設定は現実的な話を解きほぐすための装置であるだけで、それ以降はストーリーやキャラクター、蓋然性の力で成し遂げたものということだ。実際に視聴者は「追跡者THE CHASER」を見て、「扇情的」ではなく「現実的」と称賛した。

 日曜日夜11時45分に放送され最近話題を呼んだKBSドラマスペシャル4部作「シリウス」も刺激的な設定でスタートしたが、充ちたストーリーと鮮やかで繊細なキャラクター作りで完成度が称賛された。息詰まるような悲劇から麻薬犯罪の世界を刺激的に描いたが、ドラマはその中に、双子の兄弟のさかさまになった運命に伴う悲しみを重たく描き出し、はやくてスタイリッシュな展開によって視線を引き付けた。

 チョン・ヘリョン本部長は「結局はジャンルの多様化を通して、ディテールの面白さを生かすことが、過激に駆け上がる流れから離脱する方法だ」と伝えた。また「『応答せよ1997』が極端な部分がまったくなく、素材の面白さで差別化をはかったように、素材とジャンルが多様化されれば、刺激的な設定に乗っかる必要がなくなる」と付け加えた。

 “タイムスリップ”をテーマにしたファンタジー時代劇を含め、最近の時代劇ブームが続くことも、やはりこのような扇情的な流れから逸脱しようとした努力の一環だと言えるようだ。ドラマ関係者たちは、扇情的な設定も視聴者が疲労感を感じる瞬間に敬遠されるため、それだけに期待して企画するのは避けなければならないと、口を揃える。

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