<W解説>在日韓国人の被爆者と面会した韓国・尹大統領=今後、被害者支援につながるか?(画像提供:wowkorea)
<W解説>在日韓国人の被爆者と面会した韓国・尹大統領=今後、被害者支援につながるか?(画像提供:wowkorea)
先進7か国首脳会議(G7サミット)拡大会合への出席で広島を訪れた韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が19日夜、在日韓国人の被爆者らと面会した。尹大統領はこれまで被爆者への支援が十分でなかったとして陳謝した。韓国の大統領が広島の被爆者と会うのは初めて。大統領室の報道官は、今回の面会について「韓日両国の未来に向けた改善を進めるとともに、過去の歴史の解決を引き続き図る意志の表れだ」と述べ、面会の意義を強調した。一方、韓国紙のハンギョレ新聞は「初めて実現した原爆被害者との面会自体には大きな意味があるが、被害者や2、3世への実質的な補償につながるかは不透明だ」と伝えた。

尹大統領は19日夜、在日本大韓民国民団(民団)との夕食会に出席。参加した在日韓国人の被爆者や被爆2世の10人と面会した。尹大統領は植民地支配からの独立後も国の力が弱く、朝鮮戦争などもあって「同胞の皆さんが苦難と苦痛を受けているのに政府や国家が皆さんのそばにいられなかった」とした上で「政府と国家を代表する大統領として、本当に深い謝罪と慰労の言葉を申し上げる」と表明した。

夕食会に出席した元韓国人原爆犠牲者慰霊碑移設委員長のクォン・ヤンベク氏は「私も2歳の時に被爆した。今日は夢を見ているようだ。感激した」と大統領との面会を喜び、「過去のことについてあまり問い詰めたり、縛られたりしないで前を向いていきましょう。二度とこのような悲劇が繰り返されることのないよう協力しましょう」と呼びかけた。

一方、尹大統領は新設する「在外同胞庁」で、在日韓国人被爆者への支援を強化すると約束。「被爆同胞とその方々の家族、民団と同胞関係者の方々を近いうちに韓国に招待したい。故国に足を運び、母国がどれほど変わり発展したのかぜひ一度見ていただきたい」とも述べた。

韓国人の原爆被害者は約7万人で、生存者は約3万人と推計されている。また、調査によると、被爆生存者のうち、帰国したのは約2万3000人、現地に残ったのは約7000人とされる。

同協会のチョン・ウォンスル会長は尹大統領の来日に先立ち、18日、記者会見を開き、「われわれは原子爆弾の被害による痛恨の歳月を送った。核のない世界を希望する」と訴えた。同席した被爆者1世のソン・ドゥクチャン氏は「私の誕生日は1945年8月6日午前9時半ごろだ。原爆がさく裂した直後に生まれた。家が燃え、出産が差し迫った母を助ける人はおらず、防空壕の中で生まれた」と話し、「原子爆弾は絶対あってはならない。再びそのような痛みが繰り返されてはならない」と訴えた。

会見について伝えたハンギョレ新聞は「朝鮮半島出身の被爆者は多くの犠牲があったが、韓国と日本の両側で長きにわたり疎外された存在だった。日本では『世界で唯一の被爆国である日本』という言葉が強調され、韓国では1965年の韓日請求権協定ですでに終わった問題として扱われた」と解説。「原爆被害者に実質的な支援策が導き出されるためには、韓日政府の協力が必要だ」と論じた。

尹大統領は21日、岸田文雄首相とともに広島市の平和記念公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪問した。韓国の大統領が同地を訪れるのは今回が初めて。尹大統領は慰霊碑に献花した後、約10秒間、黙とうした。韓国では、日韓関係改善を目指す尹政権が日本寄りすぎるとして批判の声も上がっているが、日韓そろっての慰霊碑訪問は、両国の被爆者や支援者の間で肯定的に受け止められている。前出の韓国原爆被害者協会のチョン会長は「喜びは言葉で言い表せないほどだ」と語った。

一方、尹大統領の慰霊碑訪問に立ち会いたいとして、韓国で生活する被爆者たちも来日したが、入場することは叶わなかった。一行は近くの歩道で犠牲者への祈りを捧げた。

Copyrights(C)wowkorea.jp 3