<W解説>韓国の現代自動車、1~8月の水素燃料電池車の販売世界1位も、今一つ報道が盛り上がらない理由(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国の現代自動車、1~8月の水素燃料電池車の販売世界1位も、今一つ報道が盛り上がらない理由(画像提供:wowkorea)
韓国の現代自動車が、水素燃料電池車の今年1~8月の販売台数・シェアで世界一位となった。最大のライバルで、2位のトヨタ自動車に市場シェア40%の近くの差をつけた。次世代の車市場で大きな実績を上げたといえるが、韓国メディアの報道にさほど盛り上がりは感じられない。なぜなのか。

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 エネルギー専門の市場調査機関SNSリサーチが今月11日に発表した集計結果によると、今年1~8月に世界で販売された水素燃料電池車のうち現代自動車は7410台販売し、前年同期比26.2%増加した。シェアは昨年の52.4%から今年は59.7%に上昇した。同社が販売している燃料電池車「ネッソ(NEXO)」のうち、1~8月期は第1世代2021年型の販売が好調で、特にドイツでは302台を販売、国外では最も多い販売台数となった。2位はトヨタ自動車で、2561台を販売、昨年同期比41.9%減となった。シェアも昨年39.3%から今年は20.6%に下落した。3位はホンダで209台を販売、シェアは1.7%だった。

 集計結果を発表したSNSリサーチは「現代自動車が水素車市場のトップを維持するのは難しくないと思われる」と分析。「水素車の出力と価格競争力を補完する次世代水素燃料電池システムの開発など、グローバル企業の今後の戦略が期待される」とした。

 しかし、自国メーカーの躍進にも韓国メディアは手厳しい。キョンヒャン(京郷)新聞は、エコカーの主役は電気自動車が握っており、水素車は外に追いやられてしまっていると指摘。こうした構図になっている理由として、水素車は充電インフラの構築に多額の費用がかかり、爆発の懸念を抱く人も多い上、経済性が電気自動車に比べ劣ることを挙げた。また、水素車は1回の充電で可能な走行距離が長いことが利点だったが、バッテリー技術の進歩で電気自動車の走行距離が向上。水素車と差がなくなっていることも、電気自動車の先行を許す一因になっているとした。

 現代自動車が販売しているSUVタイプの燃料電池車「ネッソ」は、2018年1月に米ラスベガスで開催されたコンシューマーエレクトロニクス・ショーで世界初公開された。韓国では壮年3月から販売している。

 現代自動車は今年5月、12年ぶりに日本市場に再進出を果たしたが、電気自動車(EV)「アイオニック5」と共に日本市場に投入したのが「ネッソ」だ。全長4670mm、全幅1860mm、全高1640mmのボディサイズは、日本で見かけるインポートSUVとしてはボルボXC60に近いサイズ。スタイリッシュな雰囲気で、前傾したショルダーラインとボンネットのパワードームにより、グラマラスで力強いフォルムが特徴だ。燃料となる水素のタンクは3本搭載し、総容積は156.6L。モーターの最高出力は163hp。燃料100%充填基準での走行可能距離は820キロとされている。理論上は東京から広島市まで一充填で行くことが可能だ。

 同社が現在販売している水素車はネッソのみだが、同社のチャン・ジェフン社長は今年8月、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)・コヤン(高陽)市で開かれた水素産業専門展示会で、ネッソに次ぐ燃料電池自動車を発売する考えを示唆した。チャン社長は会場で「良い商品で市場の期待に応えることができると思っている」と述べた。また、この展示会に出席したハン・ドクス首相は「企業の意見と声を忠実に反映し、新政権の水素経済ビジョンと対策を近く発表する。金融・税制支援を積極的に検討し、不必要な規制は改善し、法令が不備な分野は早期に整備する」とした。

 現代自動車グループのチョン・ウィソン(鄭義宣)会長は昨年、「2040年水素エネルギー構想」を発表。「誰でもどこでも使える大衆のエネルギーになる」とし、燃料電池システムを成長事業の軸に据える考えを示した。また同社は、先月から南部のチェジュ(済州)で、「済州グリーン水素グローバルハブ構築計画」と「グリーン水素生産実証事業」に着手した。来年から市内の路線バスに水素車を投入するほか、「ネッソ」のユーザーへの対応として移動型水素充填車両を導入することなどを計画している。

 同社の水素エネルギー事業への挑戦はまだまだ続く。

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