<W解説>話題の本「赤い水曜日」、韓国の「慰安婦の常識」を覆すのか?(画像提供:wowkorea)
<W解説>話題の本「赤い水曜日」、韓国の「慰安婦の常識」を覆すのか?(画像提供:wowkorea)
韓国の新刊「赤い水曜日」が話題だ。題名が暗示している「赤い」は「真っ赤なウソ」や「扇動」であり、「水曜日」はこの30年間も続いている「水曜集会(デモ)」のことだ。

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この題名からも分かるように韓国では「慰安婦は日本により強制・拉致され、その責任を既に1990年代の日本政府が認めた。日本は今になってそれを弁明し、今までの保守政権は『慰安婦被害者』の意思を無視し日米の強要で誤った合意をしてしまった」とのストーリーが「慰安婦の常識」となっている。

この本は、それに対する学術的な反論である。著者のキム・ビョンホン(金柄憲)氏は62歳の学者だ。韓国で常識化している歴史観を韓国の学生に教える教科書に対する修正闘争を繰り広げてきた「行動派の学者」である。

韓国の「慰安婦被害者法」には慰安婦の定義を「日帝(日本帝国)により強制動員され性的虐待を受け、慰安婦としての生活を強要された被害者」としている。しかし、著者は被害を主張する慰安婦の初期証言には「強制動員」とされる内容がないと強調している。

慰安婦であったことを初めて証言したキム・ハクスン(金学順)氏。いわゆる「第1号証言」の主人公だ。キム・ハクスン氏が初めてこの証言をした8月14日は、韓国で現在「慰安婦を称える日」となって記念されている。

「赤い水曜日」の著者が注目するのは、その初期証言である。キム・ハクスン氏は ”14歳になった年に母親が再婚し、15歳の時、キーセン(妓生)を育てる『養父』に40ウォンで数年間の契約として売られた」と証言した。

40ウォンは「前借金」であり、一定期間の労働の対価を先に貰っておく「先払金」であり借金である。「妓生授業を終え、国内営業のための許可をもらおうとしたが、思ったとおりに出来ず、養父が中国に行けば儲かるだろうと私を説得した。以降、母親に連絡して許諾を受けた。中国に出発する日、母親は黄色いセーターを買ってきて平壌駅まで来て私を見送った」と証言していた。

「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」証言録に記録されていた証言だ。この「挺対協」とは後ほど組織統合や改名をし、あのユン・ミヒャン(尹美香)氏の疑惑で有名な「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」になっている。

キム・ハクスン氏は、中国で3か月間を慰安婦として働き、客の朝鮮人商人と駆け落ちしたとも証言していた。つまり、日本軍による拉致・監禁はなく、強制的でもなかったとの分析となる。日本ではこの矛盾が前から指摘されていたが、韓国ではタブー化されていたため、著書が韓国の「慰安婦の常識」に対して投じた意味は大きい。

初期証言の後、「正義連」が主張する「北京拉致説」に対してもこの本は否定している。軍人が女性を取引することも出来ないが、軍の将校が金を払わず女性を奪って部隊の中の慰安所に強制受容したとのキム・ハクスン氏の後ほどの証言をどうすれば信用できるのかと、本は主張する。

著者はまた、キム・ハクスン氏が働いていたと主張していた慰安所が果たして日本軍の慰安所なのかを問いかけている。キム・ハクスン氏の証言で、「夕方、軍人たちが来る時は酒を飲んできて『歌って、踊って』と言いながら人々を面倒くさくすることが多かった」の部分。著者は、飲酒を禁止していた日本軍慰安所の規定と合わないと、批判している。

まあ、著者が慰安婦を「契約行為」と把握していることは、ハーバード大学のラムザイヤー教授の論文と通じるところがある。

このような様々な分析を通じて、著者はキム・ハクスン氏に対して「慰安婦被害者」と認めてはいけない、また、キム・ハクスン氏を切っ掛けとして制定された「慰安婦を称える日」も「当然無効」と主張する。

その他、トランプ前米国大統領とも対面していた「慰安婦の代表格」イ・ヨンス(李容洙)氏に対しても、数多い証言の撤回・修正やこれに対する著者の法的闘争を収録している。

著者は当時、日本政府や日本軍が関係したとの説に対して、いかなる証拠がないこと、2021年1月と4月の「慰安婦被害者損害賠償請求訴訟」の判決文のミスに対して指摘している。

長い間、この「慰安婦の常識」は「日本に対する道徳的な優越感」の根拠となってきた。そのストーリーは1910年の日韓併合の時代から始まる。「朝鮮王室の最期・大韓帝国が自ら日本に半島の統治権を委ねる訳がないだろう」とのことだ。

「しかも、儒教的な世界観の(小中華の)序列で半島より格下である日本に?」の話になる。その結論は、「日本の不法的な脅迫により締結された韓日併合の契約は無効であり、その後の日本の統治行為はすべて不法行為である」となる。

これで「その後、日本は韓国(大韓帝国)を植民地化し『收奪・搾取』したあげく侵略戦争を起こし、20万人以上の純潔な半島の10代少女を慰安婦として戦場に連れて行った」のストーリーが完成する。

「浪漫的な民族主義者」または「民族主義を装った従北勢力」の場合、ストーリーはここで止まらない。「ソ連・米国のせいで南北が分断され朝鮮戦争が勃発した。半島の民族統一を警戒する米国や日本が南北対決を助長した」などのストーリーが続く。当然「急いで休戦状態の朝鮮戦争を終える『終戦宣言』をして、米軍は撤収だ」との論理になるしかない。

日帝時代とその後の「民族の受難」を象徴的に結びつける決定的な存在が「慰安婦」であり、そのシンボルが、ソウルの日本大使館を見ている「平和の少女像」であるわけだ。そして暴走してきた「反日」は日韓関係を最悪のところまで導いてきた。今回、話題の本「赤い水曜日」は、韓国の「慰安婦の常識」を覆すのか?

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