(画像提供:wowkorea)
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韓国では、今月12日から日本の新海誠監督のアニメーション映画の全7作品を上映する催しが開かれる。「君の名は。」や「天気の子」など、新海監督の作品は韓国でも多くのファンを持つ。

日韓の外交対立が続く中でも、政治的なことと文化的なことは切り離して考えるべきで、両国が映画や漫画、アニメなどを通じてつながることができるならば、それは望ましいことだ。しかし、残念なことに、いまだ韓国において、純粋に日本の文化作品に浸れる環境が整っているとは言い難い現実がある。

かつて韓国では、日本の統治時代(1910~45年)の歴史を考慮し、国民感情を害する恐れがあるとして、法令により日本の漫画や映画、音楽などを規制する時期が長年続いた。それが大きく転換されたのは、1998年に来日した当時のキム・デジュン(金大中)大統領が、日本の大衆文化を解禁する方針を表明したことだった。

以降、韓国は日本の大衆文化を徐々に受け入れ始め、99年には日本映画「Love Letter(ラブレター)」(岩井俊二 監督)が韓国で大ヒット。主演の中山美穂さんが叫んだセリフ「お元気ですか?」は当時、日本語のまま韓国人に流行っていた。

これまで韓国では4段階に分けて日本文化を徐々に開放してきており、第4次開放は2004年の1月1日。これにより、ドラマなど一部分を除いてあらゆる分野の日本大衆文化が開放された。

近年の動きを見てみると、新海監督の作品では、「君の名は。」が2017年に韓国で公開。観客動員数373万人を記録する大ヒットとなった。2019年に公開された「天気の子」は、韓国で公開された外国映画のうち最長連続上映記録を樹立した。漫画「鬼滅の刃」は、最終巻の23巻が、韓国の大手書店「教保文庫」による総合ベストセラーランキングで先月第3週から3週連続の総合1位になっている。漫画が総合1位を獲得するのは2014年の韓国作品「ミセン」以来だ。

こうした記録を見ると、日韓が対立している状況下にあっても日本文化がかつてのように制約を受けず開放され、多くの韓国人を楽しませているように見える。

しかし、依然として日本文化は韓国社会の中で制約の下にある。韓国では日本のドラマが地上波で放送されることはなく、視聴はケーブルテレビや「Netflix」のような動画配信サービスに限られる。ラジオでは、日本人歌手や日本語歌詞の曲は放送局の自主規制により、事実上、放送禁止になっている。韓国のラジオで聴くことができる日本の歌は、韓国の歌手が韓国語でリメイクした曲でないと放送されない。

アニメを視聴するにしても、「クレヨンしんちゃん」の主人公「野原しんのすけ」が「シン・チャング」と韓国名に改名されて放送されているように、「現地化」されることも多く、「日本で放映されたまま見たい」と望む層の声に応えきれていない。

また、日本の映画を視聴するにしても、大きな声で「日本の映画にハマっている」とはなかなか言いにくい雰囲気があるのも事実だ。公にされるやそれに難癖をつけたり、脅迫したりするような動きが生まれるからだ。

新海監督の「天気の子」が公開された際には、作品の輸入会社「メディアキャッスル」のもとに「日本映画を上映したら事務所を放火する」という内容の脅迫電話がかかってきたという。

また、「鬼滅の刃」のテレビアニメ版がケーブルテレビで放映が始まるや、「主人公の耳飾りのデザインが旭日旗に似ている」との批判が殺到。これを受けてテレビアニメ版とその後に公開された劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」、Netflix版はデザインの変更を余儀なくされた。

こうした状況では、落ち着いて日本文化に触れることができるはずもない。本来、政治的対立とは無縁なはずの文化も、昨今の険悪な日韓関係の影響を相当なまでに受けていると言える。

2019年10月に日韓関係が悪化する中「天気の子」が韓国で公開され、訪韓した新海監督は記者会見に臨んだ。その席で監督は「『君の名は。』公開の際、韓国のお客さんに『3年後、新作とともに戻ってくる』と約束しました。その約束を守ることができてうれしいです」とした上で、最後に「3年後、韓国と日本が仲直りして、新作を持って戻ってきて韓国のお客さんたちと良い時間が過ごせれば幸せだと思います」と語った。

その「3年後」が来年に迫る。何の制約もなく日本文化が韓国で受け入れられるようになっているだろうか。

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