“製薬大国”日本・スイス・フランスはなぜ新型コロナのワクチンを開発することが出来なかったのか(画像提供:wowkorea)
“製薬大国”日本・スイス・フランスはなぜ新型コロナのワクチンを開発することが出来なかったのか(画像提供:wowkorea)

 日本とフランス、スイスは指折りの“製薬大国”だ。2018年基準で世界上位50社の製薬会社にスイスの製薬会社は2社、フランスの製薬会社は3社、日本の製薬会社は10社が含まれた。日本は科学分野のノーベル賞受賞者を24人輩出しており、フランスからは昨年ノーベル賞化学賞(遺伝子ハサミ技術)の受賞者が出た。それにもかかわらず、これらの3ヶ国はこれまでに新型コロナのワクチン開発に成功できずにおり、その背景に関心が集まっている。

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 業界や地元の外国メディアなどによると5日、これまでに新型コロナワクチンの開発を伝えたのは、米国や英国、ドイツ、ロシア、中国、インドぐらいだ。米国が4種(ファイザー、モデルナ、ヤンセン、ノババックス)、中国が4種(シノファーム、シノバック、カンシノ、武漢研究所)で最も多い。英国はアストラゼネカワクチン、ロシアはスプートニクV・エピバクコロナ・コビバックワクチン、インドはバラト。コビシールドワクチンなどを国内外に供給している。

 スイスは多国籍製薬会社のノバルティスが早くから新型コロナワクチンの開発放棄を宣言し、治療剤の開発に転向した。しかし、ノバルティスの「イラリス」やロシュの「アクテムラ」は、新型コロナ治療剤での臨床3床が失敗し、治療剤の開発まで出来ないでいるのが現状だ。ただ、他国の製薬・バイオ企業との協業では成果を見せている。ノバルティスが支援したドイツのバイオ企業であるキュアバックのワクチンは欧州医薬品庁(EMA)の使用承認を待っている。また、ロシュはリジェネロンと協力した抗体治療剤臨床3床で入院および死亡率を減少させる結果を得た。

 フランスも事情は似ている。フランスの生命工学研究所パスツール研究所と米国のメルクは新型コロナワクチンの開発に着手したが、今年1月に臨床1床で期待以下の結果が出たため、開発を中断した。サノフィは他国の製薬・バイオ会社と協力して進める臨床試験で比較的良い結果を得ている。グラクソ・スミスクライン(GSK)と共同で開発中の新型コロナワクチン1~2床で満60歳以上の高齢者を対象に有効性を証明できなかったため臨床試験を中断したが、臨床を再計画して今年2月から再び2床の臨床試験に入った。臨床結果が肯定的な場合には、第2四半期中に臨床3床に入り、年内にワクチンを供給する予定だ。サノフィは米国のトランスレート・バイオともmRNAベースの新型コロナ1クチンを開発中で、臨床1~2床に着手すると発表した。

 日本では、アンジェス、シオノギ製薬、第一三共など5社が新型コロナワクチンを開発中だ。最も進んでいるところはアンジェスで、昨年6月から臨床試験に入り、最近、臨床2床を終えた。第一三共はmRNAワクチンを開発中で、近いうちに初期段階の臨床試験に着手する予定だ。日本政府は、自国の製薬会社がワクチン開発競争で遅れを取ると、ファイザー、アストラゼネカ、モデルナのグローバル製薬会社3社と新型コロナワクチンの供給を受ける契約を結んだ。日本最大の製薬会社である武田薬品はノババックスと委託生産契約を結び、今年下半期から年間2億5000万回分(1億2500万人分)以上のワクチンを供給する予定だ。

 世界的な製薬会社を保有するこれらの国家では、新型コロナワクチンの開発に成功できなかったことに対する自省の声が出ている。共通的な理由としては政府の支援不足が挙げられる。日本の朝日新聞は「20年間、政府はワクチンを開発したり、海外からワクチンを導入することに対して否定的だった」とし、「今回も政府は(ワクチン開発に対する)支援をほとんどせず、企業は新しいワクチンを開発しようとする動機が低かった」と指摘した。朝日新聞によると、日本政府の初期開発支援規模は100億円程度だったという。米・ブルームバーグ通信はスイスのワクチン政策について「スイスはあまりにも行動を遅く起こしたことに対する対価を支払っている」とし、「自国の製薬会社はもちろん、世界保健機関(WHO)のワクチン開発のための資金も提供されていない」と指摘した。フランスは具体的なワクチン開発費用は明らかにしていない。しかし、フランス政府の保健医療研究支援金は、2011年の35億ユーロ(約4600億7000万円)から2018年には25億ユーロ(約3300億円)へと29%減少する傾向を見せている。

 一方、米国政府は、新型コロナワクチン開発プログラム(Operation Warp Speed)を通じて180億ドル(約2兆円)をつぎ込んだ。モデルナとファイザーにそれぞれ25億ドル(約2700億円)と19億ドル(約2100億円)に達する資金を前払いし、研究・開発を支援した。他国の製薬会社であるアストラゼネカにも12億ドル(約1300億円)を、サノフィ-GSKには21億ドル(約2300億円)を支援し、新型コロナワクチンの開発速度を押し上げた。

 ワクチンに対する政府と国民の不信も新型コロナの開発速度が落ちた理由の一つに挙げられている。日本では1970年代から天然痘ワクチンなど予防接種後、死亡や後遺症が問題になって訴訟が相次いだ。最近ははしか・風疹(MMR)ワクチンおよびヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンをめぐる議論が起きた。フランスでは貪欲な製薬会社が臨床試験段階を縮小し、急いでワクチンを市場に出したという内容のドキュメンタリー映画「ホールド・アップ」が大きな人気を集めた。フランスの有名医師はファイザーワクチンが開発された当時、「新技術であるmRNA方式を基盤としたワクチンを安全だと宣言するに至った」と批判の声もした。

 業界は、新型コロナワクチン開発の遅れは、他国だけの問題ではないと皮肉った。韓国国内で新型コロナワクチンを開発しているところは、SKバイオサイエンス、ジェネキシン(Genexine)、セリド(Cellid)、ジンウォン生命科学、ユーバイオロジックスの5か所だ。最も開発が進んでいる製薬会社でも臨床2床段階であり、来年上半期に発売が予想される。今年、韓国政府が新型コロナワクチンや治療剤の開発のために策定した予算は1528億ウォン(約149億円)程度だ。製薬業界の関係者は「開発会社が政府から支援を受ける金額は数十億ウォン(数億円)程度だが、非臨床試験をカバーするほどにしかならない」とし、「臨床3床には数千億ウォン(数100億円)の費用がかかるが、支援規模が非常に小さく、開発業者にはこれといった支援を受けられないのが現実だ」と指摘した。

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