慰安婦問題をめぐり、日本政府は27日、「『従軍慰安婦』という表現は誤解を招く恐れがある」として、「単に『慰安婦』という用語を用いることが適切だ」とする答弁書を閣議決定した。

これに対し、韓国側は遺憾の意を表明。外交部(外務省に相当)のチェ・ヨンサム(崔泳杉)報道官は29日、「日本軍慰安婦の動員、募集、移送の強制性は否定しようとしても否定できない歴史的事実」とした。

また、「韓国政府は、日本政府がこれまで自ら明らかにしてきた歴史的認識を揺らぐことなく維持し、これを覆そうとする試みや逆行する言動を控え、歴史問題解決に対する真正性を示す必要があることを改めて強調したい」と述べた。

今回、閣議決定した答弁書は、日本政府が、日本維新の会の馬場伸幸衆院議員の質問主意書に答えたもの。馬場議員は、質問主意書で「従軍慰安婦」という用語について、「軍により強制連行されたかのようなイメージが染みついてしまっている」として、「今後、政府として『従軍慰安婦』や『いわゆる従軍慰安婦』との表現を用いることは、不適切であると考える」とした。

慰安婦の表現をめぐっては、1993年の河野洋平官房長官談話で、「いわゆる従軍慰安婦」との表現が用いられた。

答弁書では河野談話が出された当時は「従軍慰安婦」との表現が「広く社会一般に用いられる状況だった」と説明。その後に朝日新聞が、慰安婦を強制連行したとする虚偽の証言に基づく記事について、2014年に誤りと認めた経緯を踏まえ、「『従軍慰安婦』という用語を用いることは誤解を招く恐れがある」とし、「単に『慰安婦』という用語を用いることが適切だ」とした。

河野談話では、慰安婦に関して、慰安所の設置や管理、慰安婦の移送に旧日本軍が関与したことを認め、「おわびと反省」を表明したが、この談話が韓国では「日本政府が旧日本軍による慰安婦の強制連行を認めた」と解釈されている。

現在、日本では、メディアの多くが「元慰安婦」、「韓国人慰安婦」といった表現を用いている。一方、教科書では、今年4月から中学校で使用されている一部の教科書で「従軍慰安婦」の表現を用いているほか、来春から使用される高校の教科書の一部でも「いわゆる従軍慰安婦」との表現を使っている。

韓国でも「従軍慰安婦」という表現は一般的でなく、韓国メディアが用いるのは、旧日本軍の責任を明確にするという立場から「日本軍慰安婦」「日本軍慰安婦被害者」との表現。また、元慰安婦の女性らが日本政府を相手取り損害賠償を求めている、いわゆる慰安婦訴訟について報じる際は、原告の元慰安婦について、一般的に「日本軍慰安婦被害者」という用語を用いている。

今回の答弁書の閣議決定を受けて、韓国メディアは「責任回避 意図」(東亜日報)、「国家責任避けようとの戦略」(中央日報)、「日本、歴史わい曲 加速化?」(MBN)などといった見出しで報じている。

言葉にはその言葉を使う人の「考え方」や「思想」が反映されたりする。「慰安婦 vs 従軍慰安婦」の問題だけでない。同じく日韓の歴史問題となっている「徴用工 vs 募集工」の呼び方も、この際、日韓の議論を経て明確にしてほしいものだ。

日本としては1965年の条約により、韓国の「徴用工裁判」に対応する必要はない。その間、「徴用」を主張する韓国は「強制徴用」の言葉まで使っている。「徴用」だけでも強制の意味は含まれているはずだが、それを強調するために「強制徴用」との言葉を用いているのだ。

原告らが本当に徴用されていたのか、或いは募集に応じていたのか、法的な問題は別にし、歴史の真実を見つけるために、過去の資料を公開してほしいものだ。

今回の出来事が「日韓共通の歴史認識」を見つけるきっかけになってほしい。深刻なレベルになっている韓国と日本との歴史認識のズレ。その問題解決を、良識のある日本人も、良識のある韓国人も、長々と待っている状況である。

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