東京・日本武道館で今月27日に行われる安倍晋三元首相の国葬に、韓国はハン・ドクス(韓悳洙)首相を団長とする弔問団が参列することを正式に発表した。日本の政財界要人との会談も計画しており、日韓関係の改善のため、政府高官の往来を積み重ねる狙いもあるとみられる。

 安倍晋元首相が参議院選挙の応援演説中に銃で撃たれ死亡したニュースは、当時、韓国でも大きく報じられた。ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は安倍氏が死去した7月8日当日に昭恵夫人に弔電を送った。尹氏は「日本の憲政史上、最長の首相であり、尊敬される政治家を失った遺族と日本の国民に哀悼とお見舞いの意を伝える」と表明。事件に関しては「容認できない犯罪行為」とし、深い悲しみを表した。同月12日にはソウルの日本大使館を弔問。安倍氏の遺影を前に黙とうし、「アジアの繁栄と発展のために献身された故安倍晋三元総理の冥福を祈ります。最も近い隣である韓国と日本が今後緊密に協力していくことを望みます」などと記帳した。

 今回、弔問団の団長として国葬に参列するハン首相も、当時、記者団に「北東アジアのために努力した方が亡くなり、非常に残念だ」と弔意を表した。その上で「安倍元首相とは個人的に会ったことがある」とし、2013年の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に安倍元首相とパク・クネ(朴槿恵)元大統領が出席した際のことを振り返り、「安倍元首相は韓日関係を改善させようとする意志を持っていた。もちろん、韓日間にはさまざまな困難な問題があるが、国民同士では近い関係であり、民主主義、市場経済、人権などの価値観を共有する」と述べた。

 韓国政府は安倍氏が死去した直後に、首相をトップとする弔問団を派遣する方針を決めていたが、15日、正式に発表した。団長のハン氏のほか、与党「国民の力」のチョン・ジンソク(鄭鎮碩)非常対策委員長(国会副議長)が副団長として参列する。ユン・ドクミン(尹徳敏)駐日韓国大使、ユ・フンス(柳興洙)韓日親善協会中央会会長(元駐日大使)が加わる。

 韓国の首相が訪日するのは、2019年10月に当時のイ・ナギョン(李洛淵)首相が天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に合わせて訪日して以来。

 ハン氏は、南西部・チョンジュ(全州)市出身の73歳。ソウル大学経済学部卒業、米ハーバード大大学院経済学博士課程修了。特許庁、通商産業部(現・産業通商支援部、部は省に相当)で職務にあたりし、同部では次官を務めた。その後、キム・デジュン(金大中)政権で外交通商部(現・外交部)通商交渉本部長、ノ・ムヒョン(盧武鉉)政権では経済副首相と首相を務め、韓米FTA(自由貿易協定)交渉を主導した。イ・ミョンバク(李明博)政権時には2009年2月から3年間、駐米韓国大使を務めた。進歩・保守政権で重責を担った人物として知られる。2012年2月から3年間、韓国貿易協会会長を務めた。今年5月20日、国会の認証を受け、翌21日に尹大統領から第48代首相に任命された。

 大統領制の韓国で首相は、大韓民国憲法の規定で大統領を補佐し、行政に関する大統領の命令を受け、各行政機関を統括する役割を有すると定められている。そのため、大統領が議長を務める国務会議(日本の閣議に相当)では副議長を務め、大統領が任命する国務委員(日本の国務大臣に相当)を提請(提示して任命を請求すること)する任を有する。また、首相は国務委員の解任を大統領に建議することもできる。さらに、大統領が弾劾などによる欠位、あるいは事故により職務遂行不能状態に陥った時には、首相が大統領の任務を代行する。

 日本の首相経験者の葬儀には韓国から大統領が参列することもあった。2000年5月14日、小渕恵三元首相が在任中に死去し、6月8日に執り行われた内閣・自民党合同葬にはキム・デジュン(金大中)大統領が参列。金氏は小渕氏と1998年の首脳会談の際、「日韓共同宣言」を交わすなど、格別な関係を築いた。日韓共同宣言は韓国では「金大中・小渕宣言」と呼ばれ、日韓関係改善に意欲を見せている尹大統領は、この宣言を演説などで度々取り上げている。先月15日の光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)の記念演説でも同宣言を継承する考えを改めて示した上で、「両国の政府と国民が互い尊重し、経済、安全保障、社会、文化にわたる幅広い協力を通じて、国際社会の平和と繁栄に共に貢献すべきだ」と述べた。

 ハン氏は安倍氏の国葬参列で訪日した際、日本の政界や財界の関係者と会談する予定。岸田文雄首相とも会談するか注目される。

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