<W解説>大韓航空のアシアナ買収計画が正念場=EUが両社合併に異議(画像提供:wowkorea)
<W解説>大韓航空のアシアナ買収計画が正念場=EUが両社合併に異議(画像提供:wowkorea)
韓国最大の航空会社の大韓航空と、2位のアシアナ航空の合併を審査している欧州連合(EU)は、欧州と韓国を結ぶ路線の競争が制限され、独占体制が形成されかねないとして、両社の合併に異議を唱えた。2020年11月からアシアナ航空との合併を推進してきた大韓航空は、韓国を含む14か国に企業統合申告をし、現在、残るEU、日本、米国の3か国の審査結果を待っている状況。EUは大韓航空の答弁書なども踏まえて8月に合併に対する最終的な承認の可否を決定する方針だが、韓国メディアは「両社の合併に赤信号が灯った」(ハンギョレ新聞)などと報じている。

両社の合併をめぐっては、アシアナ航空が2015年12月期に負債が8.4兆ウォン円(現レートで約8760億9900万円)に達するなど経営が悪化。2018年に本社ビルを売却するも資金繰りに苦しむようになり、韓国財閥の錦湖(クモ)アシアナグループは2019年4月にアシアナ航空の売却を発表した。2019年末に現代財閥系列のHDC現代産業開発と未来アセット大宇のコンソーシアムがアシアナ航空を買収することを発表したが、その後の新型コロナウイルスの感染拡大で、買収契約を結んだ当時と状況が大きく変わり、2020年9月、HDCはアシアナ航空の買収計画の白紙を発表した。これを受け、アシアナ航空の債権団を取りまとめる政府系の韓国産業銀行が、売却先を大韓航空に決めた。

大韓航空は2020年11月にアシアナ航空の買収を正式発表した。大韓航空は、同社とアシアナ航空が独立した会社として運営するよりも、統合したほうがシナジー効果が期待でき、雇用維持につながるほか、重複路線の効率化や新規就航地の増加、運航スケージュールの多様化、顧客の選択肢の増加、マイルの獲得や利用手段の多様化などメリットがあるとしている。両社は合併完了後にアシアナブランドを廃止し、大韓航空ブランドの「Korean Air」に一本化し、運航機材や販売組織の効率化を進める。

大韓航空は2021年1月以降、アシアナ航空との合併を14の競争当局へ申請。これまで自国の韓国のほかトルコ、台湾、ベトナム、シンガポール、マレーシア、豪州、中国の当局が承認した。現在、条件付きで承認した英国と、事前審査の対象から除外される旨を大韓航空に通知したタイ、審査対象ではないという理由で手続きを終結したフィリピンを含む11か国・地域で審査が終了しており、残るはEU、日本、米国の3か国となっている。

こうした中、EUの行政執行機関である欧州委員会は今月17日(現地時間)、両社の企業統合審査についての中間審査結果を発表し、合併に異を唱えた。欧州委員会は「大韓航空によるアシアナ航空買収によって、欧州経済圏(EEA)と韓国を結ぶ旅客・貨物航空運送サービス市場における競争が制限されるという予備見解を通知した」と明らかにした。具体的には旅客輸送の事業ではインチョン(仁川)-フランクフルト(ドイツ)、パリ(フランス)、バロセロナ(スペイン)、ローマ(イタリア)の4路線で、貨物事業では韓国-欧州全域で競争が制限されることが懸念されるとの見解を示した。欧州委員会は「合併によって航空券の価格が上昇したり、旅客と航空運送サービスの品質が低下したりする恐れがある」としている。

欧州委員会の見解発表を受けて大韓航空は「中間審査報告書に記されている競争当局の懸念事項が解消できるよう、答弁書を提出するとともに、積極的な是正措置を話し合い、最終承認を引き出せるよう最善を尽くす」などとコメントした。

大韓航空は当初、昨年中にはすべての競争当局の承認が得られるものと踏んでいたが、各地域での競争法上の審査が長引いている。EUは必須申告国家であるため、EUの承認が得られなければ残りの国の審査結果に関わらず合併は事実上、不可能になる。今回、EUが合併に異議を唱えただけに、韓国メディアは「合併に赤信号」と報じている。欧州委員会は大韓航空と是正措置について協議を続け、8月3日に合併に対する最終的な承認の可否を決定する方針で、大韓航空はアシアナ航空買収に向け正念場を迎えている。

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