<W解説>元徴用工問題、韓国政府の解決策発表後、最初に対応した企業は「ポスコ」=財団に4億円寄付(画像提供:wowkorea)
<W解説>元徴用工問題、韓国政府の解決策発表後、最初に対応した企業は「ポスコ」=財団に4億円寄付(画像提供:wowkorea)
日韓最大の懸案である元徴用工訴訟問題に関連し、韓国の鉄鋼大手ポスコが15日、被告の日本企業の賠償金相当額を原告に支払う韓国政府の解決策に賛同し、政府傘下の財団に40億ウォン(約4億1000万円)を寄付したと明らかにした。解決策の発表後、企業として初めての寄付となった。

元徴用工訴訟をめぐっては、韓国大法院(最高裁判所)が2018年10月、雇用主だった三菱重工業と日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じた。しかし、日本としては戦時中の賠償問題に関しては1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、被告の2社は履行を拒んだ。このため、原告側は、日本企業が韓国内に持つ資産を売却して賠償に充てる「現金化」の手続きを進めてきた。

こうした中、韓国政府は今月6日、大法院判決で確定した被告の日本企業の賠償を韓国の財団が肩代わりする解決策を発表した。記者会見した韓国外交部(外務省に相当)のパク・チン(朴振)長官は、経済や安全保障などあらゆる分野で日韓協力が非常に重要だとして「長時間硬直した関係を放置せず、国益の観点から国民のために悪循環の輪を断ち切るべきだ」と述べた。その上で、日本に対し、「過去の不幸な歴史を克服し、和解と善隣友好協力に立脚した未来志向的関係を発展させていくため、共に努力することを望む」と述べた。また、尹大統領は解決策について「これまで政府が、被害者の立場を尊重しながら、韓日両国の共同利益と未来発展に符合する方法を模索した結果だ」と強調した。

韓国政府が発表した「解決策」は、元徴用工を支援する韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、遅延利子を含む賠償金相当額を原告らに支給する内容。その資金は「民間の自発的な寄付」でまかなうこととし、被告の日本企業の資金拠出は前提としていない。これまでに、大法院の判決で勝訴が確定した原告は15人で、賠償金は遅延利息を含め約40億ウォン(約4億2000万円)とされる。また、現在係争中の訴訟についても、原告の勝訴が確定すれば、同様に対応する予定となっている。

財団への寄付企業は1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づく日本の経済協力で恩恵を受けた韓国企業が想定され、このうちの一社であるポスコが今回、最初に資金拠出に対応した形だ。ポスコは「政府発表の趣旨に合わせて自発的に拠出することにした」としている。財団は15日、ポスコからの入金を確認したと発表した。財団はポスコの資金を財源として、賠償金の受け取りを申請した原告から支払いを始める見通しだ。

日韓請求権・経済協力協定の締結で、韓国政府は対日請求権を放棄する代わりに5億ドル(現在のレートで約670億円)の経済協力資金を受け取った。この一部が企業支援資金に使われ、ポスコの前身、ポハン(浦項)製鉄所には5億ドルの24%にあたる1億1948万ドルが投入された。

協定に基づく日本の経済協力で恩恵を受けた韓国企業は、ポスコのほかに韓国道路公社、韓国鉄道公社、韓国外換銀行(現ハナ銀行)、韓国電力公社、KT、KT&G、韓国水資源公社など16社ある。これら企業が今後ポスコに続き寄付に乗り出すか注目される。ただ、聯合ニュースによると、韓国政府は民間の自発的な寄付で財源をまかなうとして、寄付について企業側と接触しない方針を示している。一部の民間企業は、政府の要請がない場合、背任などの問題があるとして寄付に難色を示しているという。

一方、原告のうち、生存する3人は財団からの受け取りを拒否する考えを示している。故人の原告12人への賠償金は遺族に受け取る権利があり、一部の遺族は政府の解決策を受け入れているという。

韓国政府は受け取りを拒否する原告への説得を続ける方針だが、原告側の解決策への反発は強く、難航も予想される。とはいえ、今日16日の尹大統領の訪日を前に、韓国政府としては解決策を着実に履行している姿勢を示すことができたといえる。

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