<W解説>北朝鮮の食糧事情、90年代以来最悪も、昨年のミサイル発射費用で全住民の46日分の米がまかなえた(画像提供:wowkorea)
<W解説>北朝鮮の食糧事情、90年代以来最悪も、昨年のミサイル発射費用で全住民の46日分の米がまかなえた(画像提供:wowkorea)
韓国メディアによると、北朝鮮の食糧難が1990年代半ばの大飢饉(ききん)以降、最も深刻な状況となっていることが分かった。北朝鮮は昨年、過去にない頻度でミサイル発射を行ったが、昨年、ミサイル発射にかかった費用で全住民が46日間食べられる米を購入できるとの試算も出ている。

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韓国メディアが米国の北朝鮮専門メディア「38ノース」の報道を引用して伝えたところによると、北朝鮮の穀物の需要と供給量、食料価格などを基に分析した結果、穀物の在庫量が最低必要量以下に下がっていることが分かった。最低必要量は、食糧均等配分を前提に社会維持に不可欠な食糧の下限をいう。北朝鮮は、国連食糧農業機関(FAO)基準の最低必要量の80%水準と推定された。FAOや国連世界食糧計画(WFP)など国連の資料や、デイリーNKなど北朝鮮専門メディアから入手した資料を比較・分析した結果という。

北朝鮮で主な食糧となっているのは米とトウモロコシで、これらの価格は最近急騰している。北朝鮮では米が不足するとトウモロコシやオオムギなどの作物への依存が大きくなるため、トウモロコシの価格が米よりも大幅に上昇した。また、2021年上半期の北朝鮮の米の価格は、国際価格比1キロ当たり0.5ドル以上の差があった。2009年に38ノースが調査を始めて以降、北朝鮮の穀物価格は上回っていたが、今回のように大きな差が出たのは異例という。38ノースは北朝鮮の食糧供給網が崩壊していることを示すものと指摘した。

北朝鮮では1900年代、大飢饉に見舞われた。住民は家財道具を売り払って食べ物に替えたりしたが、配給システムも崩壊したことで、約100万人以上が死亡したとされる。96年、朝鮮労働党は「苦難の行軍」とのスローガンを掲げ、飢饉と経済的苦境を乗り越えようと住民に呼びかけた。

ここ最近の北朝鮮の食糧難はこの大飢饉以来、最も深刻な状況となっているという。北朝鮮の食糧価格は、新型コロナウイルスの感染拡大で中朝国境を閉鎖した2020年1月と紙幣を刷る紙とインクの不足で貨幣代用証書を発行した2021年秋に急騰した。38ノースは、数十年にわたる北朝鮮経済の低迷に加え、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)やウクライナ戦争などで世界の食糧需給事情が不安定になり、より大きな打撃を受けたと分析した。また、中国が最近、「ゼロコロナ政策」を撤回したが、このことで世界の食糧需要が増えれば、北朝鮮の食糧不足はさらに深刻になる可能性があると指摘した。

こうした中、韓国政府の関係者が先月明らかにしたところによると、北東部のハムギョンド(咸鏡道)では食糧不足により餓死者が相次いでいるという。咸鏡道は北朝鮮内でも経済的に特に立ち遅れた地域だ。新型コロナの感染拡大により封鎖が強化されたことで中央から遠い地域の食糧事情が特に悪化したとの見方もある。

こうした深刻な状況であるのにも関わらず、北朝鮮は昨年、ミサイル発射に莫大な費用を投じた。韓国政府関係者は、ミサイル発射にかけた費用は、昨年だけで約2600億ウォン(約274億円)にも上ると推計した。特に高コストの大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射だけで1430億ウォン(約150億円)を使い、短距離弾道ミサイル(SRBM)の発射にも500億ウォン(約53億円)を投じたと試算された。ミサイル発射の総費用は米50万トンを購入できる額に相当し、これは北朝鮮のすべての住民が46日分をまかなえる量だ。また、今年の食糧不足分(約80万トン)の60%以上を補うことができる規模という。

昨年11月初め、北朝鮮とロシアを結ぶ列車が約2年ぶりに運行が再開され、貿易も再び始まった。しかし、北朝鮮が真っ先に輸入したのは生活必需品ではなくキム・ジョンウン(金正恩)総書記の一族が使用する「白馬」だったという。

金総書記は「人民大衆第一主義」を掲げているが、実際には住民を犠牲にして大量破壊兵器の開発に心血を注いでいる。

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