<W解説>「10・4宣言」もどこ吹く風、中距離弾道ミサイルを発射した北朝鮮(画像提供:wowkorea)
<W解説>「10・4宣言」もどこ吹く風、中距離弾道ミサイルを発射した北朝鮮(画像提供:wowkorea)
北朝鮮が4日午前、弾道ミサイル1発を発射した。ミサイルは北朝鮮北部のチャガンド(慈江道)舞坪里(ムピョンリ)付近から発射され、青森県上空を通過して約20分間で約4600キロ飛行した。最大高度は約970キロ、最高速度は約マッハ17。北朝鮮のミサイルが日本上空を通過するのは2017年9月以来、7回目。飛行距離はこれまでで最長で、日本のEEZ(排他的経済水域)の外側に落下したものとみられる。

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 また今回は、今年1月に慈江道から発射した中距離弾道ミサイル「火星12型」を最大飛行距離で発射したものとみられている。「火星12型」を1月に発射した際には、通常よりも高い角度の弾道で発射したため、日本列島を越えず日本海に落下した。「火星12型」は米軍のインド太平洋地域での戦略拠点であるグアムを攻撃するための兵器。北朝鮮は2017年8月、グアム周辺に火星12型を打ち込む作戦計画を検討中と表明し、緊張が高まったことがある。

 北朝鮮が今回、約5年ぶりに中距離弾道ミサイルを発射する武力挑発を強行した背景には、原子力空母を朝鮮半島周辺に展開するなど、軍事的な圧力を強める米国に対し、核戦力の向上を誇示する狙いがあったものとみられる。

 韓国大統領室は同日、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開いた。NSCでは、北朝鮮の中距離弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会決議に対する明白な違反であり、朝鮮半島と北東アジアを含む国際社会の平和を脅かす重大な挑発行為として、強く非難した。また、北朝鮮の度重なる挑発行為は看過できず、挑発には代価が伴うことを確認し、緊密な韓米連携に基づき、国際社会と共に対北朝鮮制裁強化を含むさまざまな抑止策を模索することにした。

 また、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は記者団に対し「無謀な核挑発はわが軍をはじめとする同盟国や国際社会の決然とした対応に直面する」と警告。NSCでは米国の拡大抑止強化、日米間安保協力の強化に向けた協議実施を指示した。

 キム・ハンスン国家安保室長は、日米の安保トップとそれぞれ電話協議を行い、北朝鮮の挑発に断固とした対応を取ることを確認した。また、外交部(外務省に相当)は、「北が非核化の道に復帰せざるを得ない状況をつくる」とし、北朝鮮が2017年9月以来、7回目の核実験に今後踏み切った場合、米国や日本などの友好国と連携しながら、国連安全保障理事会としての新たな制裁決議を取りまとめるほか、韓国独自の精査措置を打ち出す方針を示した。

 奇しくも北朝鮮が今回、中距離弾道ミサイルを発射した10月4日は、2007年に当時のノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領と北朝鮮のキム・ジョンイル(金正日)総書記が南北首脳宣言(10・4宣言)を採択した日だ。同宣言には朝鮮半島の終戦宣言に向けた首脳会談の推進や、ファンヘ(黄海)平和地帯の設置などが盛り込まれている。

 同宣言から15年となった日に北朝鮮はミサイル発射を強行したが、北朝鮮に対し融和政策をとってきたムン・ジェイン(文在寅)前大統領は同日、SNSに投稿し、「宣言の精神をよみがえらせ、共存・共生、平和・繁へと揺るぎなく進んでいくことを期待する」と低姿勢を維持した。しかし、北朝鮮が最近、弾道ミサイル発射を繰り返していることに関しては「北はミサイル挑発を中断し、モラトリアム(発射の一時停止)の約束を守るべき」と指摘した。文氏の投稿に、与党「国民の力」のユン・サンヒョン議員は「この渦中に『10・4宣言』を自ら祝った。前大統領は今もなお北に片思い中だ」と批判した。

 北朝鮮は先月25日からミサイルを相次いで発射。わずか10日間で5回にも上る。韓国の情報機関の国家情報院は先月28日、北朝鮮が7回目の核実験に踏み切る場合、10月16日~11月7日に行う可能性が高いとする分析結果を明らかにしている。今回の発射は核実験に踏み切る前段階ということなのか。

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