<W解説>元徴用工問題、日韓が局長級協議=識者は両国首脳のリーダーシップ求める(画像提供:wowkorea)
<W解説>元徴用工問題、日韓が局長級協議=識者は両国首脳のリーダーシップ求める(画像提供:wowkorea)
日本と韓国の外務省の高官が26日、東京の外務省内で局長級協議を行った。日韓最大の懸案である元徴用工問題をめぐり、韓国外交部(外務省に相当)のイ・サンリョル(李相烈)アジア太平洋局長が問題解決に向けた韓国側の取り組みを説明。外務省の船越健裕アジア大洋州局長は韓国側が責任を持って対応するよう求めた。

 元徴用工問題をめぐっては、戦前に日本企業に強制労働をさせられたと主張する元徴用工が提訴。韓国の大法院(最高裁)は2018年10月に新日鉄住金(現・日本製鉄)、11月に三菱重工業に対し、それぞれ原告への賠償を命じた。両社とも履行を拒んだことから、原告側は韓国内にあるこれら企業の資産の差し押さえと売却(現金化)に向けた手続きに踏み切った。大法院は近く、原告が差し押さえた日本企業の韓国内資産の売却(現金化)命令を出す可能性がある。仮に現金化されれば日本政府は制裁措置を取る構えで、そうなれば日韓関係は破綻するとさえ言われている。このため、現金化は絶対に避けなければならないという点では日韓両政府とも一致している。

 日韓関係改善に意欲を見せるユン・ソギョル(尹錫悦)政権は問題解決を図るための官民協議会を先月発足させた。外交部のチョ・ヒョンドン第1次官が主宰し、学者や元外交官のほか、当初は原告側の代理人らもメンバーに加わっていた。チョ第1次官は初会合の終了後、「今日のような対話の場が、問題解決の重要な推進力になる」と強調した。しかし、外交部が先月、大法院に対し問題解決に向けた外交努力を説明する意見書を提出したことに原告側が猛反発。「被害者側との信頼関係を完全に失わせる行為だ」とし、協議会に今後参加しないことを明らかにした。このため、今月9日に開かれた3回目の協議会は原告側が全員不参加の中で進行した。外交部のパク・チン(朴振)長官は今後、原告側とは直接会って意見を聞く考えを示しているが、当事者側が全員不参加という不完全な形で今後進められることになる協議会の意義が問われる事態となっている。

 三菱重工業の資産の現金化に関する大法院の最終判断は迫っており、一部の韓国メディアは担当裁判官が来月4日に退官するため、8月中には判断が下されるとの見方を伝えている。しかし、外交部の関係者は「裁判官が、担当する事件を全て処理してから退く義務はなく、9月4日が期限だと判断する必要はなさそうだ」との見解を示している。

 26日の局長級会議は約2時間にわたって行われた。李氏は協議会で解決に向けた意見を集約している状況などを説明した上で、日本側にも「誠意ある呼応を示す必要がある」と対応を求めた。しかし、日本政府は元徴用工問題について両政府が1965年に結んだ日韓請求権協定で解決済みとの立場であるため、同会議で船越氏は、日韓関係を健全な関係に戻すべく、韓国側に責任をもって対応するよう改めて求めたという。

 一方、日本国際交流センターと韓国国際交流財団は24~26日、「日韓フォーラム」を都内で開いた。フォーラムでは日韓首脳会談の早期の実施と、両国首脳のシャトル外交の再開を求める共同声明を発表した。朝鮮半島をめぐる国際政治などが専門の小此木政夫・慶応大学名誉教授と、ユ・ミョンファン元外交通商部長官は共同声明で、両国の首脳に対し、国民を説得して日韓関係の突破口を開くため、リーダーシップを発揮しなければならないと提言。両国の問題を突破できるカギは政治的なリーダーの決断にかかっており、戦略的対話を通じた信頼回復にあると強調した。

 同フォーラムは1993年の細川護熙(もりひろ)首相とキム・ヨンサム(金泳三)大統領(いずれも当時)との間で行われた日韓首脳会談を機に設置された。日米間の民間レベルの会議である「下田会議」をモデルとし、「未来志向」の新しい日韓関係の在り方を議論している。両国の政治家や経済人、学者、ジャーナリストなどのオピニオンリーダーの参加を得て、政治、経済、文化など幅広い分野にわたり両国の交流促進を図ることが目的だ。日韓両国で交互に毎年開催し、新型コロナ禍でもテレビ会議方式で開いてきた。今年は3年ぶりに対面形式で開かれ、両国から約50人が出席した。

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