韓国の産業通商資源部(部は省に相当)は21日、企画財政部や国土交通部などと共にまとめた「半導体超大国達成戦略」を発表した。この戦略では、2026年までの5年間に、企業が半導体に340兆ウォン(約35兆8000億円)以上の投資を達成するよう目指すとしている。また、半導体関連の人材を育成するため、来年、専門の大学院を新たに指定し、教授の人件費や機材費などを支援する。

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 韓国半導体協会の試算では、2030年時点での韓国の半導体産業の輸出と生産規模に対する見込み、世界市場の増加スピード、世界市場シェアなどを反映すると、半導体産業の売り上げ増加率は年平均6.2%、産業人材の増加率は年平均5.6%となる見通しという。

 ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領はかねてから半導体産業のさらなる成長の可能性に注目しており、大統領選では「半導体超強大国を目指し、50兆ウォン規模の基金をつくる」「半導体分野で10万人の人材育成」を公約に掲げた。半導体の中でも韓国が強みを持つメモリー半導体の競争力を維持しながら、システム半導体やAI(人工知能)チップなど、非メモリー半導体分野においても他国を追い抜くために投資を拡大する考えを示してきた。

 先月7日の国務会議で尹氏は、ソウル大学半導体研究所の元所長のイ・ジョンホ科学技術情報通信部長官による講演を聴講。この席で尹氏は「半導体は国家安保上の戦略的価値を持っている。米国のバイデン大統領が先の韓米首脳会談の際、世界最大のファウンドリー(受託生産)施設であるピョンテク(平沢)を真っ先に訪問したのは、安保上の戦略的観点から米国は韓国を無視できないということを世界に象徴的に示したものだ」と語ったという。

 21日に発表された「半導体超大国達成戦略」では、大規模な新設・増設工事が進められているソウル近郊の平沢とヨンイン(竜仁)の半導体団地の電力・用水施設など主要インフラの構築費用を国費で支援するとしている。また、半導体設備と研究開発投資に対する税制優遇も拡大。大企業には設備投資の税額控除率を中堅企業と同率の8~12%へと2ポイント引き上げる。こうしたインフラ構築支援と税制優遇の拡大により、企業に対し、今後5年間に半導体分野に対して340兆ウォン(約35兆円)以上を投資するよう促す計画だ。

 また、半導体関連の人材を育成するため、政府は業界と連携し「半導体アカデミー」を設立させ、今後5年間で3600人以上を育成する。尹氏は前述の先月7日の国務会議で、半導体産業をさらに伸ばすことを目指す上で不可欠なこととして人材育成を挙げ、「革新はヒューマンキャピタル(人的資本)だ。われわれの成長と飛躍のためには、先端産業を引っ張っていく人材の育成が最も切実に求められている」と語った。

 設立する「半導体アカデミー」では大学生や新入社員など対象別に教育を実施する。また、来年に半導体に特化した大学院を新たに指定し、教授の人件費や機材、研究開発を国が集中的に支援する。

 このほか、次世代のシステム半導体などの研究開発も支援し、政府としては世界シェアを2030年までに現在よりも向上させたい考えだ。

 半導体業界は政府が発表した戦略を評価しており、半導体産業協会のアン・ギヒョン専務は「人材投入などが急がれる状況で、政府は業界が必要としている計画を打ち出した。今、投資支援を増やしてこそ海外との差を広げることができる。今後は計画通りに政策がすすめられることが重要だ」と話した。

 しかし、大規模な人材育成計画に関して、専門家からは懸念の声も出ている。韓国紙・ハンギョレ新聞の取材に応じたホソ(湖西)大学技術経営専門大学院のキム・ハクス教授は「基本的に半導体産業の景気サイクルは波が大きい。市場の需要と供給、半導体産業が進む方向、分野別の人材需要などを正確に分析することで非効率的な予算の執行を防ぐことができる」とし、「半導体が主流であるかのように言われる、流行に流されたアプローチは避けなければならない」と指摘した。

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