韓国では半導体企業の人材養成を国が支援してくれる(画像提供:wowkorea)
韓国では半導体企業の人材養成を国が支援してくれる(画像提供:wowkorea)
韓国ドラマで「お前みたいな奴一人を育てるのに、税金がどれだけかかるのか知っているのか」というセリフがある。

公務員でもないのに、民間企業の人材養成費用を国家が出してくれる場合もある。例えば、最近ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が強調している半導体企業たちがそれだ。雇用労働部(厚生労働省の労働部分に相当)の傘下機関である韓国ポリテク大学は、大企業の半導体生産人材を大挙輩出している所である。半導体の就職が全国1位であるポリテク大学のチョンジュ(清州)キャンパスに、今年5月に訪れてみた。国のお金で運営しているこの学校の半導体クリーンルームなど内部をみると、半導体工場と全く違いがない。学生たちは1枚30万ウォン(約3万円)を超えるウェーハも、実習に惜しみなく使うという。

これに加え、この大学は政府予算135億ウォン(約14億円)をかけて2024年に面積1224坪、地下1階・地上3階の人材養成センターを設立する。卒業する時までにかかるお金は、一般の大学の授業料にすぎない。学生にとってはとてもすばらしい大学だ。しかしこの学校の最大受恵者は、この学校の卒業生を雇用する「企業」だ。先ほどのドラマのセリフの「お前のような奴」を税金で育て上げたのは、この上なくよいことだ。だが、振り返ってみると何か腑(ふ)に落ちないところがある。

それは、熟練した技術者たちを何の対価もなくそのまま雇用する企業たちの稼ぐ利益が「国家の所有ではない」からだ。他の国はどうだろうか。そうではない。例えばドイツなどの先進国では、韓国の大韓商工会議所のような所で基金を集めその役割をする。大学ではなく企業が費用を捻出し熟練工を養成するマイスターを育て、企業が雇用したマイスターたちが熟練工を育てる。国のお金で直接熟練工を養成し企業に提供するかたちは、かつて政府主導型の産業開発時代が生んだ奇形型な構造だ。

新政府の経済政策基調は「規制を減らし干渉しないので、企業が自ら投資も増やし、良質な雇用も創出せよ」というものだ。法人税率をこれまでの25%から22%に下げることも同じ脈絡である。「税収を減らし、福祉も減らす」ということだ。脆弱(ぜいじゃく)層の頼みであった「高齢者の働き口」予算も、来年から大幅に削減される予定だ。ところで大企業に対しては、職業能力開発支援を名分に国のお金で新入社員の教育までしてくれる。「市場経済と公正」とは本来そのようなものだったのだろうか。

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