ユン氏は勝利するにはしたが、それこそしのぎを削る「超接戦」であった。「0.73%・24万票」の得票差は、1987年の大統領直接選挙制の導入以降、最少の票差である。それでもイ候補は敗北を潔く認め、ユン氏に「統合と和合の時代を開いてくださることをお願いする」と語った。1年前、米国の大統領選でジョー・バイデン大統領に敗けたドナルド・トランプ前大統領は敗北を認めず、その支持者たちが米国会議事堂に乱入し流血事態を起こしたこととは対照的である。敗者の承服と勝者の統合は、選挙民主主義の基本精神だ。イ候補が敗者の美徳を示したことと同様、ユン氏も大統領選の過程で物議をかもした「政治報復の是非」をきれいに洗い流す「統合の歩み」で、それに応えるべきだろう。
ユン氏は何よりも「自身を支持しなかった半数の国民が注視している」ということに対し、謙虚になるべきだ。厳しく表現するなら、ユン氏はムン・ジェイン(文在寅)政権の偽善と無能への「反発」により執権することになったということだ。資質や道徳性などの自身の能力よりは「政権交代」を支持する国民の望みが作用したのである。政権交代を支持する世論が常に50%を超えていたにもかかわらず、圧倒的勝利ができず負ける寸前であったような投票結果になったのは「このような大統領選候補に、大韓民国の未来を任せることはできない」という世論がそれほど多かったという証拠である。「統合政府」「挙国内閣」の実行により、陣営を問わず最高の人材を起用する開かれた政治を行なっていくことだけが、このような国民の疑念を解消する道である。
得票数が物語っているように、今回の選挙は保守・革新陣営が総結集したことで、地域構図と世代・階層間の対立の溝がより深まった。特に20代と30代の男女間におけるジェンダー対立は、回復が困難なほど深まった。2大候補者による票を得るための戦略的計算が、これを一層煽(あお)った側面があったことは否定できない。ユン氏は結者解之(自分が起こした問題は自分が解決するという意)の心情で、これを治癒しなければならないだろう。
これまでの大統領たちは「私を支持しなかった国民お一人お一人も私の国民で、わが国民である」と語ってきた。しかしこれを実践した大統領は見当たらない。どの政府もしっかり実践できなかった「国民統合」という課題を、ユン氏による新政権が成功することを願う。
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