最近、韓国では総合不動産税(総不税)の代案として国土保有税が提示され、注目を集めている。この税が注目を集めているのは、不動産価格の暴騰を防ぎ、憲法に保障された「土地公概念」の理念を実現できるという理由からだ。土地公概念とは政府が公共の利益のため、土地の利用と処分を適切に制限できる概念のことだ。

 22日、韓国メディアのニューストマトによると、21日、与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)大統領候補陣営の関係者が、李氏が国土保有税を新設して不動産価格の暴騰を抑え、その財源を利用して、ベーシックインカム(基本所得)の支給を考えていると明らかにした。

 国土保有税は土地を持った人に、土地価格の一定割合を税金として納めるようにする制度だ。憲法に規定された土地公概念を具現するため、公有資産と判断される土地に、一括して税金を課す。土地は現在、韓国では私有財産に分類されるが、法令上は他の財産と違って公共性も持つ。

 憲法第122条には、「国家は国民すべての生産及び生活の基盤となる国土の効率的で均衡ある利用・開発と保全のため、法律の定めにより、必要な制限と義務を課せる」という規定がある。

 ただ、私有財産制を原則としているので、土地の私的所有を認めながらも、どれぐらい制限するかが論争の的になっている。土地の使用、取得、保有などに制限を設けた場合、税法上土地関連の取得、保有、処分に対する取り扱いも他資産の税制とは異なってくるからだ。

 23日東亜日報によると、李氏は「国土保有税」を得た財源で、国民に基本所得を与えると明らかにした。

 李氏は2017年の大統領選の予備選挙の頃から、総不税の代案として土地を保有したすべての人に、一定比率の税金を課す「国土保有税」を主張してきた。財産税は維持したまま、これまでの総不税を国土保有税にかえるということだ。李氏は18日フェイスブックに「住宅価格の上昇に対する怒りが、政策全般の不信につながった。国民が不動産税に反感を持っていることをよく知っている」とし、「代案は総不税廃止による金持ち減税ではなく、不動産から取りたてた税金で、もっと多くの国民に与えることに目的がある」と説明した。それとともに「その代案が、私が申し上げた国土保有税」とし、「全国民の90%が、払うことより受けるものがもっと多ければ、庶民の税金を実質的に減らすことになる」と主張した。

 19日の毎日経済新聞では、こうした李氏の主張に対して、疑問を投げかけた。

 李氏の主張は、土地に保有税を課してつくった財源で、すべての国民に基本所得を支給しようというものだ。そうすれば、国民の90%は税金で納めるお金より基本所得として受け取るお金の方が多くなる。土地保有上位の10%に入らないのなら、土地保有税に反対すれば損だということだ。したがって、「反対することは馬鹿なことだ」というのが彼の論理だ。

 しかし、果たしてそうだろうか。徴税は強制的に執行される税金を納めなければ処罰される。徴税は本質的に「国家の力」、ドイツの政治・社会学者であるマックス・ヴェーバー風に言えば「暴力」に依存する。

 国家暴力が正当化されるには、2つの要件が満たされなければならない。第一は道徳的正当性だ。第二に、結果の責任だ。徴税にはこれを正当化する道徳的根拠がなければならないという意味だ。国家は、その徴税で共同体に、良い結果を生む責任も負わなければならない。

 しかし、払ったお金よりも多く返してもらえるという論理は、道徳的正当性とは関係がない。そこには儲けるための計算があるだけだ。利得の計算だけで、「国家の強制」に賛成することはできない。そうしろというのは、国民の90%を侮辱する主張だ。

 今すぐ、より多くの利益を得たとしても、持続可能であることを証明しなければならない。国民の90%は土地保有税として払った金額よりも多くの金額を基本所得として返してもらうなら、その時は恩恵になり得る。しかし、長期的に共同体に損になるなら、すべきではない。李氏が政策の「道徳的正当性」と「結果の責任」を忘れないことを望む。

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