イカゲームのコスプレをする韓国の人気数学講師ヒョン・ウジン氏。背後には日本の世界的芸術家・草間弥生さんの作品が飾られている。(画像提供:wowkorea)
イカゲームのコスプレをする韓国の人気数学講師ヒョン・ウジン氏。背後には日本の世界的芸術家・草間弥生さんの作品が飾られている。(画像提供:wowkorea)
韓国の大手オンライン予備校「メガスタディ(Mega Study)」の人気数学講師ヒョン・ウジン氏(34)が、高価な日本の美術品をオークションで落札し、韓国で話題になっている。

ヒョン氏は先月26日、日本の世界的芸術家・草間弥生さんの作品「Gold-Sky-Nets」(112×145.5センチ)を、この日のオークションの最高価格である36億5000万ウォン(約3億5000万円)で落札した。

草間さんの作品は韓国でもコレクターがおり、ヒョン氏もその一人。ヒョン氏は今回「Gold-Sky-Nets」を落札したことで草間さんの作品4作を所有することになった。4作品の落札価格は総額108億5000万ウォン(約10億4千万円)に上る。

34歳の若さで高額な美術品を落札できたのは、ヒョン氏が年収200億ウォン(約19億円)以上と推定される超人気予備校講師だからだ。

ヒョン氏は米国の名門スタンフォード大学の数学科を卒業し、韓国の大手オンライン予備校「メガスタディ」で数学を教えている。「数学1打講師(1位のスター講師)」と呼ばれ、韓国の受験生から絶大的な支持を得ている。

超学歴社会の「受験地獄」として知られる韓国では教育熱が高く、多くの子どもたちが小学生のころから塾に通う。受験産業も盛んで、予備校は人気講師が多く所属していれば売り上げが上がるため、人気講師は破格の報酬を得ることができる。大学受験予備校の人気講師ともなればその報酬は人気芸能人並みとなる。

大学受験対策の授業形態の中でも2000年代から広がりを見せたインターネット講義は、地方に住んでいても有名講師の高クオリティな授業を受けられるとあって人気が高く、ヒョン氏は「最も有名なインターネット講師」としても知られる。

インターネット講師は芸能人が事務所に所属しているように、インターネット講義をするインターネット講師もプラットフォーム会社に所属している。インターネット講師たちはプラットフォーム会社と専属契約を結び、契約期間、自分の講義の映像はそのプラットフォーム会社のサイトでのみ独占配信される。

ヒョン氏が所属する「メガスタディ」もそのうちの一社だ。メガスタディは、自らも塾講師の経験があり、受験生から支持を受けていたソン・ジュウン氏が2000年に設立した。彼は自らが「韓国の東大」ソウル大学に3回の挑戦の末、合格・卒業した人物でもある。「本質で勝負します」をモットーに、講師の発掘や養成にこだわり、「高品質コンテンツ」を売りに急成長。今や韓国のオンライン予備校最大手の地位を誇る。

一方、韓国の塾市場は実力主義で、給与は成果に基づいて支払われることになる。ヒョン氏のように破格の報酬を手にする人気講師がいる一方、多くの塾講師は長時間働きながら、収入は学校の教員よりも少なく、身分も不安定だ。

2017年には、韓国のあるインターネット塾で、人気女性講師が別の同僚講師に自身のオリジナル教材を盗用されたとSNS上で訴え、女性講師2人の熾烈(しれつ)なバトルが繰り広げられた。受験界で、受験生はもとより、講師もまた生き残りをかけた熾烈な競争を繰り広げていることをうかがわせる騒動だった。

先ほど、韓国の保守系野党「国民の力」の大統領候補がユン・ソクヨル(尹錫悦、ユン・ソギョル、ユン・ソンニョル)氏に決まった。彼はソウル大学法学部には現役合格したものの、司法試験には9年間の挑戦の末に合格し、検察総長に上り詰めた。

「受験地獄」と言われる韓国社会、熾烈な競争は確かに地獄だが、その競争社会を生きる方法としてヒョン氏のように約10億の日本作品4作を独り占めしながら「受験天国」を味わう人もいるものだ。

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