日本政府が世界最大手の半導体ファウンドリー(委託生産)企業である台湾のTSMCに巨額の補助金を与えて日本に新工場を誘致したことが世界貿易機関(WTO)の規定に反するという指摘が出た。日本に半導体を輸出する韓国などが被害を受けたとして、WTOに提訴する可能性があるということだ。

◇日本政府、5000億円かけてTSMCの工場建設か
 日本経済新聞が15日に発表したところによると、TSMCは2024年の量産を目標に、来年から22~28ナノメートル(1ナノは10億分の1)工程の半導体を生産する工場を熊本県に新設する計画だという。

 TSMCの発表に、岸田文雄首相もこたえた。経済産業省は2019年からTSMCの新工場誘致に向けて交渉を続けてきた。岸田首相はこの日の夕方、衆議院解散関連の記者会見でTSMC工場建設計画について言及し、「我が国の半導体産業の不可欠性と自律性を高め、経済安全保障に大きく寄与するものと期待される」と歓迎した。

 岸田首相はTSMCの現地工場への“太っ腹な投資”も約束した。大型民間投資などに対する支援策を新たな経済対策に盛り込む予定だ。朝日新聞によると、TSMC新工場への投資額は計1兆円で、このうちの半分の5000億円を日本政府が支援する方向で検討している。

◇巨額の補助金、市場わい曲の懸念
 しかし、このような補助金支給がWTOの規則違反の議論につながりかねないという指摘が出ている。経済・安保を名分に、巨額の補助金を支給する行為が市場をわい曲させる恐れがあるからだ。

 補助金支給案としては、経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が運営する基金を活用して支援する案が有力だ。日本政府はTSMCに補助金を支払いながら日本国内の市場を優先して製品供給する義務を課した後、事業撤退などで義務を履行できなければ補助金の返却を求める計画だ。

 食料やエネルギーのように必須財となった半導体を市場原理に任せず、国が責任を持って確保するというのが日本政府の政策方向であるが、これはWTOが事例ごとに違法性を判断する『相殺完全の対象となりうる(イエロー)補助金』に該当する。WTOが直ちに協定違反とみなす『禁止される(レッド)補助金』よりは1ランク低い水準だ。レッド補助金とは、輸出を支援したり、国産部品や材料を使う条件で支援する補助金のことだ。

 日本に半導体を輸出する韓国企業などがWTOに提訴する可能性もあると日経は分析した。日本政府の補助金を受けた工場で半導体を生産し、該当工場で生産した半導体を低価格で日本国内に供給する場合、韓国などの半導体メーカーが日本に製品を輸出する場合に被害を受けるとして提訴される可能性があるということだ。また、TSMCが日本工場の生産品を安く輸出する際にも訴えられる危険がある。

 ただし、イエロー補助金の違反はなかなか認められないとの見方もある。現行制度の下におけるイエロー補助金違反の事例はこれまでにも数件にとどまっているのが現状であり、提訴した国の産業に発生した損害と補助金の因果関係を立証することが難しいということだ。日経は「米国と欧州連合(EU)も最近、中国政府の半導体産業に対する巨額の補助金を問題視してきたが、提訴しなかった」と報道した。

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