(画像提供:wowkorea)
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韓国で刑務所を仮出所した男(56)が、先月、2人の女性を相次いで殺害する事件があり、男に装着させられていた監視用の電子足輪をめぐり、波紋が広がっている。

男は特殊強制わいせつ罪で懲役刑を受け服役し、今年5月に仮出所した。その際、行動を監視するための電子足輪が装着されていたが、男は先月26日に40代の女性を殺害した後、電子足輪を切断。警察が所在を確認できない状況の中、男は29日にまた50代の女性を殺害した。その後、警察署に自首し、逮捕された。

韓国では2008年9月から、前科者に電子足輪を装着し、GPS(全地球測位システム)を利用して一定期間、出所後の行動を監視することができる法律が施行された。法案には当初、人権侵害だとして反対意見もあったが、2006年に執行猶予中の性犯罪者が小学生を性的暴行後に殺害する事件が起き、法案成立を望む声が高まった。

当初は装着対象者を「13歳未満の児童に対する性暴力犯罪者」に限定していたが、その後の法改正により、性犯罪の前科者のほか、殺人や強盗の前科者などにも広げられた。

ただ、これらの犯罪の前科者全員が電子足輪を装着するわけではなく、再犯の可能性があるとして検察が裁判所に請求し、認められた場合に限られている。その際、裁判所は「電子足輪の付着命令」として装着期間を言い渡す。最長で30年。

聯合ニュースによると、装着者の位置情報は現在、ソウル市内の法務部(日本の法務省に相当)の「位置追跡中央管制センター」で監視している。電子足輪が切断された際には、自動的にセンターに信号が送られる仕組みで、センターは直ちに警察と管轄の保護観察所に装着者の情報を通知することになっている。

装着者は7月現在、4866人で、このうち性犯罪の前科者が2586人と最も多く、次いで殺人前科者457人となっている。

韓国では電子足輪の導入により再犯率を大きく下げることに成功した。性犯罪の再犯率は、制度導入前(2004~2008年)は14.1%だったが、導入後は1.86%にまで劇的に減少した。

しかし、装着者が電子足輪を切断するケースが相次いでおり、これが大きな課題となっている。今年は先月までに切断事例は13件発生しているという。

法務部はこれまで6回にわたって足輪の材質強化を図ってきた。7月にはパク・ポムゲ(朴範界)法相が「韓国の電子足輪は世界最高の水準だ」と自信満々に話していたが、今回、電子足輪を金物屋で購入した道具で切断した男による殺人事件が起こってしまった。

今回、警察と法務部保護観察所は男が足輪を切断してから自首するまでの38時間、男の行方を追うも、結局、身柄を確保できず、結果的に事件を防ぐことができなかった。

装着者が足輪を切断した際、機器が感知して管制センターに信号を送り、センターからの通報を受けて警察が出動するという現在の仕組みでは、身柄確保に当たる警察の初動が遅れるという課題が、今回、改めて浮き彫りになった。

また、電子足輪で装着者の位置情報は把握できても、装着者がその場で何をしているのかまでは把握できず、監視の限界も課題となっており、電子足輪を装着したまま性犯罪に及ぶケースも相次いでいるという。

事件を受け、パク法相は国民に謝罪したが、法務部が再発防止策の一つとして打ち出したのは、またしても足輪の材質強化だった。東亜日報によると、従来以上に丈夫な材質のストラップ(足首を覆う固定装置)を導入するという。また、電子足輪を破損させた場合の処罰を強化することも決めたというが、これらの対策が問題解決につながるかは不透明だ。

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