(画像提供:wowkorea)
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1965年に韓日間で結ばれた「請求権協定」の肝心要な部分は第2条1項と3項だ。以下の通りとなっている。

第2条 1.両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。

第2条 3.(前略)一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。

最小限の常識を備えていたとすれば、韓日両国政府および個別の国民らはこれ以上、相手に対して如何なる請求権も行使出来なくなっていることが明らかに理解できる。条項の何処を見ても抜け穴は無い。このような請求権協定にも拘らず、日本国内の左派勢力らが主に最初に火をつけた「慰安婦問題」及び「徴用問題」が、韓国の巨大な反日感情と野合すると同時に、イシューが大きくなり続けて、今日の最悪な状態の韓日関係を招いた。

韓国人徴用に関する訴訟は1997年に新日本製鉄(以降、新日鉄住金に社名変更し今は日本製鉄)を相手に二人の韓国人が日本の大阪地方裁判所に提起したのが最初だ。この訴訟は大阪地方裁判所及び高等裁判所での敗訴を経て、2003年に日本の最高裁判所の棄却判決で最終結論が出た。

その後、原告らは諦めずに他の韓国人らと力を合わせて、2005年にソウル中央地方裁判所で訴訟を提起した。これについて2008年、ソウル中央司法裁判所は「日本の裁判所による判決が有効だ」と言い、原告敗訴の判決を下して、ソウル高等裁判所も原告らの控訴を棄却した。

しかしこれに不服な原告らが上告して、大法院(日本の最高裁判所に相当)が2012年に「日本での判決は(韓国の現行)憲法の趣旨に反する」と語り、下級審(ソウル高等裁判所)の判決を破棄して差し戻しの処理をした。

そしてソウル高等裁判所はこのような大法院の指針に従い、再び裁判をして、2013年に新日鉄住金に対して原告らに1億ウォンずつ賠償するよう判決した。新日鉄住金はこれに不服であったが、2018年に大法院は1億ウォンずつ賠償するよう最終決定した。その後、当該日本企業の資産は差し押さえ措置が進行中である。

加えてこのような大法院のスタンス(2012年判決:日本での判決は(韓国の現行)憲法の趣旨に反するもの)に影響を受けた韓国人85人が2015年に日本企業16社を相手に大規模訴訟を提起することとなり、それに対して2021年6月7日にソウル中央司法裁判所での一審が予想外の「却下」決定を下したのだ。

「却下」とは当該事件が訴訟の要件さえ備えない時に下す判定だ。一言で言って、1965年の請求権協定が存在しなかったとしたら訴訟が成立しえたが、両国間の協定が既に存在することによって当該案件は訴訟の対象にならないという話だ。

結局、韓国の裁判所は事案の性格が同一な複数の訴訟について、一方に対しては紆余曲折(一審・二審で原告敗訴→最高裁で原告勝訴)の末に「賠償判決」を最終確定させ、他方に対してはこのように一審で「却下」決定を下すことによって混乱をもたらす格好となった。

今回の一審での却下決定が「予想外」だったという話は、それくらい韓国社会が常識と法治から遠ざかっている社会だという反証となる。「国際法」や1965年の「請求権協定」などについての基礎的な常識さえあれば、今回出て来た一審判定が「正常」であり、むしろ以前の大法院の判決が「非正常」に属するということをすぐに理解できる。

以前の大法院の判決が時代錯誤ないし前近代的な判決であったという点は、2012年当時、判決を下した判事自らが明らかにした発言でも明らかに表れている。

「建国する気持ちで判決した」

法律を学んで法律で出世した判事が法律に依拠して判決をせず、「建国する気持ち」と言う聞いたことも見たことも無い変な主観と理念を介入させて判決をしたのだ。判決当時(2012年)は建国してから既に64年が経過した年だった。

だとすると、当該判事(キム・ヌンファン、金能煥)は、韓日協定を結ぶはるか以前の1948年前後でとどまっている、20世紀半ばの認識水準を持って、21世紀に繰り広げられた訴訟を処理したわけとなるのであるから、その判断が「非正常」であり「前近代的」に流れたのも無理でないように思う。

韓日関係悪化を触発したのはこのような判事らだけでない。2017年8月17日にムン・ジェイン(文在寅)大統領は「個人の請求権は残っている」と言う発言をすることで大きな混乱をもたらした。裁判所の判断は別として、この間の一貫した韓国政府の基調(基本スタンス)は「徴用問題は請求権協定で既に解決状態」だというものだった。

そしてこのような立場を反映して、韓国政府は1975年と2008年の二回に渡って、徴用関連の補償を公式に実施したのだ。ところが、混乱を正すべき位置にいる大統領がむしろこのようなやり方で全国民に向かって扇動性のある発言をして混乱を煽った。

このように常識と分別を忘却したまま、ポピュリズムに埋没した一部(誤った判事、大統領)が大韓民国全体を混乱に陥れて、国益を蝕んでいるのが今日の状況だと見られる。今回の一審の決定が大法院まで維持されるか確信を持って語るのは難しい。万が一、大法院まで維持されたとしたら、これは韓国社会に蔓延する「非正常」を「正常」へ転じる象徴的な事件になるだろう。

※この記事は韓国の保守論客ファンドビルダーさんの寄稿文を日本語に翻訳したものです。韓国メディアには既に韓国語版が公開されています。翻訳の正確さに対する責任は当社にあります。

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