キム・ミョンス(金命洙)大法院長(日本の最高裁判所長に相当)。韓国法曹の革新勢力「ウリ法研究会」の会長出身で、ムン・ジェイン(文在寅)大統領から任命された”司法積弊改革”の切り札である。(画像提供:wowkorea)
キム・ミョンス(金命洙)大法院長(日本の最高裁判所長に相当)。韓国法曹の革新勢力「ウリ法研究会」の会長出身で、ムン・ジェイン(文在寅)大統領から任命された”司法積弊改革”の切り札である。(画像提供:wowkorea)
2014年、日本製の韓国旅客船「セウォル号」の沈没事故。修学旅行中の高校生たちが犠牲になり、その2年後のパク・クネ(朴槿恵)大統領の弾劾に繋がった。

 事故当時の韓国大統領の行跡に関して日本語で記事を出した産経新聞のソウル特派員・加藤達也 氏はその理由で韓国で在宅起訴された。裁判の間、韓国から日本への出国が禁止された。

 その時「裁判関与行為」をしたとの理由で、韓国国会が史上初の裁判官の弾劾訴追を可決した。この件は、日本でも大きなニュースとなっている。110年前、日本の統治により近代司法制度が朝鮮半島に導入されてから、最も注目される法曹の出来事でもある。

 そのイム・ソングン(林成根)釜山高等裁判所部長判事への弾劾を巡って繰り広げられたキム・ミョンス(金命洙)大法院長(日本の最高裁判所長に相当)の嘘の波紋が収まらずにいる。金大法院長は韓国法曹の革新勢力「ウリ法研究会」の会長出身で、ムン・ジェイン(文在寅)大統領から任命された”司法積弊改革”の切り札。

 この問題で進歩系の執権与党と保守系の野党が真っ向から対立している中、野党「国民の力」は「嘘つき大法院長は司法部の長として権威と資格を喪失した」と言い、辞職するように求めた。

 これに反して、執権与党「共に民主党」は「大法院長が三権分立を尊重して辞表を受理できなかったと語ったもの」と言い、「林部長判事による面談内容の録音と公開行為が非正常」だと主張している。同じ事案についても正反対の見方で舌戦を繰り広げているのだ。

 一方、林部長判事の司法研修院(日本の司法修習や司法研修所に相当)同期140名は一斉に弾劾劇の協力者である金大法院長の弾劾を要求して乗り出した。また、判事専用インターネット掲示板には金大法院長を対象にした鋭い批判の書き込みが絶えずにいる。

 「司法部の長がどうしてメディアに嘘をつくのか」と言う内容から、「偽証罪の裁判は担当しなかったようではないか」「崩れた信頼と良心を回復しようとするなら100年はかかるだろう」などに至るまで、辛辣な批判がリレーの如く続いている。

 今回の事態は、国会の弾劾準備の段階で、ターゲットの林部長判事が史上初の立法による司法弾劾を防ぐため自ら金大法院長に辞表を出したことから始まる。金大法院長は国会が弾劾準備中との理由で辞表を突き返したとの林部長判事の説明。

 その後、進歩系の執権与党が支配する韓国国会では林判事の弾劾訴追案が可決された。立法の司法弾劾に対して司法の首脳が協力した結果となった。辞表に関してマスコミに林部長判事との対話内容を否定した金大法院長。

 怒った林部長判事は金大法院長との対話録音を公開し、大論争が勃発した。衝撃は軽いものではない。金大法院長の資質、道徳性問題は勿論、政治的中立の如何、司法部全般に対する信頼毀損問題へ広がらざるを得ないからだ。

 金大法院長は文大統領に任命され、2017年の就任の挨拶で「判事の独立を侵害しようとするいかなる試みも全身全霊で防ぐつもりだ」と語った。しかし林部長判事が公開した録音では「政治的状況も察しなければならない」と語っていたことが明らかとなった。

 大法院長が政界からの視線を窺ったという非難を避けられなくなった。そうでなくとも、司法部の中立性と道徳性に対する韓国国民の不信が小さくない状況で、自ら裁判所の権威を破壊した発言だ。

 金大法院長は2018年に「裁判所は国民の権利と法治主義を守る最後の砦」だと語ったという。しかし嘘をついても「記憶が間違っていた」と言う弁明でごまかそうとする彼に韓国国民は法治主義の最後の砦を率いる長の権威をこれ以上見出すのが難しい。

 司法権の独立守護と品位の維持に誰よりも先頭に立たねばらないが、むしろ反対の道を歩んだ金大法院長は彼に相応しい応答を速やかに出さねばならない。そうしてこそ韓国の”法治”に不必要な混乱を防ぎ、司法部の”権威と信頼”も取り戻せる。

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