(画像提供:wowkorea)
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最近、韓国では文大統領による国会での施政演説がなされた。その中で気になったのは、経済について43回も言及したものの、文政権の経済政策の不調や失敗(成功しない)の理由や原因について明確に語らなかった事だ。

 そもそも文政権は、就任当初、「所得主導型経済成長」政策、または「最低賃金引き上げ政策」を実施して、「1最低賃金引き上げ → 2国民(特に低所得層・若年層)の所得向上 → 3消費・内需の拡大=経済成長 → 4雇用の拡大 → 5自然的な賃金向上 → 2、3…という好循環」を達成しようとしていた。

 ところが現実には、最低賃金引き上げ政策は既に人件費負担に喘いでいた中小企業の多くに解雇や倒産・廃業を決断させる引き金となった。また従来より、遵法精神の欠如している中小企業の多くの経営者は最低賃金さえも支給せず、違法な雇用が横行していたが、文政権の最低賃金引き上げ政策はそうした便法的な対応さえも不可能にしたのだ。

 では何故、文政権は「所得主導型経済成長」政策、または「最低賃金引き上げ政策」を実施しようとしたのか。何故、大統領選挙の公約として掲げていたのか。

 コロナウィルス騒動以前の話だが、日本のアベノミクス効果による経済成長や雇用の改善がその背景にある。日本経済と比較しつつ、また一説によると文政権の経済担当のブレーンらが、デービット・アトキンソン氏の経済言説に触発されたとも耳にした。そのアトキンソン氏は日本の菅総理が経済政策において大いに参考にしている人物でもある。アトキンソン氏自身も韓国の最低賃金引き上げ政策について、政策自体は正しいものの、最低賃金引き上げ率が非現実的だった(だけ)と発言していた。

 しかし、韓国において果たして最低賃金引き上げ政策を通した「所得主導型経済成長」は可能だったのであろうか。

 そもそも論だが、日本の場合、企業の多くは共産党から自民党に至るまで、左右の経済思想の違いを超えて政治家や識者から批判される程、内部留保を溜め込む黒字体質なのだ。最低賃金の引き上げ、人件費が引き上げられると、日本企業の多くは短期的には黒字や利益が減少するのは避けられない。しかし、アトキンソン氏の指摘にもあるが、中長期的には生産性の向上によって相当程度カバーし得るし、全体的には「国民(特に低所得層・若年層)の所得向上 → 消費・内需の拡大=経済成長」が達成し得る構造にある。

 ところが韓国の企業を見てみると、中小企業のみならず、財閥系の大企業であっても、一部の中核企業を除くと、内部留保はおろか、多くが赤字体質であり、利益で債務の利息さえも支払えない、もしくはトントンだと言う事例も少なくない。これまで多くの韓国メディアで問題視されてきた事でもある。

 つまり「1最低賃金引き上げ → 2企業倒産・大規模解雇の発生 → 3国民(特に低所得層・若年層)の所得低下 → 4消費・内需の収縮=経済低成長orマイナス成長 → 5雇用の量的収縮、質の低下 → 6自然的な賃金低下・停滞 → …と言う悪循環」に陥り得るという事だ。

 いずれにせよ、韓国の経済構造や韓国企業の財務状況の実態を直視出来ず、最低賃金引き上げ政策を通した「所得主導型経済成長」が可能な筈だと判断していた文政権の経済ブレーンらには「すべき論」ではなく、現実・現状に即した対応が求められるだろう。

 数年間、韓国ほど急な上昇ではなかったのだが、最低賃金を着実にアップしてきた日本経済を目撃している。韓国経済に対して、専門性・専門知識を欠いた立場としては、”処方箋”の作成は不可能であり、”代案なき反論”になってしまうのだが、日本経済に対する妬みを感じるのは韓国経済ブレーンらと同じだろう。

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