キム・ソンス監督、西島秀俊
キム・ソンス監督、西島秀俊
西島秀俊主演最新作「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」が、いよいよ1月24日公開される。

キム・ヒョジン の最新ニュースまとめ

 原作は、第15回サントリーミステリー大賞読者賞受賞のベストセラー小説・司城志朗著「ゲノムハザード」(小学館文庫)。本作では西島秀俊演じる平凡な会社員が、実は記憶を“上書き”された天才科学者だったという衝撃の事実を知り、誰が何のために記憶を“上書き”したのか―謎に迫っていくというストーリーが繰り広げられるアクション・サスペンス。

 主演は「サヨナライツカ」や「ストロベリーナイト」などに出演する実力派俳優・西島秀俊。本作は、以前から西島秀俊に注目してきたというキム・ソンス監督のラブコールに応えての出演となった。キム・ソンス監督は撮影を振り返って、「西島秀俊は、疲れを知らない体力と揺らぐことのない精神力で、危険なシーンも含めほとんどを代役なしで100%演じきってくれた」と話す。西島は、日本では撮影許可が下りないような韓国でのカーチェイスシーンなど数々のアクションシーンを演じている。

【キム・ソンス監督 インタビュー】
<b>-原作本「ゲノムハザード」を読み、監督ご自身が制作会社へ映画化の話を持ち込んだと伺いましたが、監督をそのような行動にかき立てたこの物語の一番の魅力はなんでしょうか。また、映画化にあたりこだわった点を教えてください。</b>
「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」を企画する前、韓国ではある科学者が行ったES細胞の研究論文がねつ造だったという事実が発覚し、国際的にも非難を受けるという大事件がありました。その事件を映画化したいと思い、資料収集も兼ねて図書館に通っていた時、偶然手にしたのがこの「ゲノムハザード」という小説でした。原作を読み終えて、これは映画にしなければとすぐに心に決めました。原作が持っている魅力の一つとして記憶を扱っているという点があります。記憶を扱ったストーリーは喪失がテーマになっているものが多いですが、「ゲノムハザード」はそれらとは違い、他人の記憶を持って生きてきたというユニークな設定と、そこから「誰が妻を殺したのか?」というミステリーからストーリーが広がっていくという点が、映画的な魅力として大きく迫ってきたのです。

原作の持つもう1つの魅力は、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画が思い浮かんだという点でした。ヒッチコック監督は、私が心から尊敬する監督の1人です。ヒッチコック的な人物像というと、「間違えられた男」「知りすぎていた男」に代表されますが、前者は別の人間と間違えられた男が理由もわからないまま追いつめられるなかで自身のアイデンティティーを見つけていくという人間であり、後者は自身のアイデンティティーによって悪夢のような現実に陥っていく人間の典型です。「ゲノムハザード」は、この2つのタイプを1つのストーリーに盛り込むことのできる素晴らしい機会だと感じました。そこへ“名前のない男”という「ゲノムハザード」特有の設定を付け加えて物語を仕上げていくことで、ヒッチコックへのオマージュを込めた現代的なスリラーを作り上げてみたいと思いました。「ゲノムハザード」は、劇中の台詞を借りて言うならば、「私の運命の挑戦」です。

<b>-石神武人そしてオ・ジヌを演じた西島秀俊さんの印象を聞かせてください。</b>
西島秀俊さんの優れた演技力にファンとしていつも感嘆していたので、石神役に最初に浮かんだのも当然のごとく彼でした。知的で母性本能をくすぐる柔和な外見と、強く男らしく内に熱いものを秘めている内面を併せ持つ二面性のある俳優であるということも、主人公を演じてほしいと思った大きな理由でした。いたって平凡な男である石神と、とても特別な男であるオ・ジヌ。主人公を演じる俳優は日本人と韓国人、2つの人格を完璧に演じ分け2つの言語を完璧に操ることができなければならない。危険なアクションをしながら同時に突然見知らぬ世界に放り出された存在としての孤独で荒涼とした心の風景を表現しなければならない。とても難しい役どころです。西島さんは、疲れを知らない体力と揺らぐことない精神力で危険なシーンのほとんどを代役なしで演じてくれました。監督としては、今までに見ることのなかった西島さんの姿を彼の中から引き出していく、ということを心がけました。

<b>-カン・ジウォン役のキム・ヒョジンさんの印象について聞かせてください。</b>
カン・ジウォンは記者としての責任感も持ちながら石神武人に同情し助けの手を差し伸べる、とても素敵な女性です。人情はあるが感傷的にはならずとても頭のいい人物でもあります。カン・ジウォンは、混沌としたドラマを観客と分かち合うための案内人として重要な役です。彼女は日本語が話せず、日本語で演技をするために彼女に与えられたトレーニング時間は、わずか3週間でした。日本語を話すことと日本語で演技をすることは、全く次元の違う難しさです。もとより不可能な状況とも思えましたが、私は彼女が他の韓国女優の誰よりも熱い情熱を持った女優であると信じていました。彼女は完璧にこなしてくれたと思います。

<b>-石神美由紀役の真木よう子さんの印象について聞かせてください。</b>
美由紀は、本作のキーパーソンなので、強い印象を残せる女優でなければなりませんでした。真木さんは、繊細で感情表現に深みのある女優です。視線をそっと落とすだけで観客の注目をぱっと集め、それだけで多くのことを表現できる。まるで別世界から来た女性のように神秘的なオーラを放つのが真木さん特有の魅力だと思います。観客に具体的な説明をしなくても「彼女には何か事情や考えがあるのだな」と信じさせることができるのは、真木さんの演技力がなせる業だと思います。

<b>-撮影中の思い出、エピソードを教えてください。</b>
日本人と韓国人のスタッフが入り混じった現場だったのですが、両国のスタッフがある時から通訳なしでも目を見るだけで相手が何を望んでいるのか理解する様子を見ていて本当に感動しました。また、監督として最も感動した瞬間は、石神が橋の上でカン・ジウォンと激しい口論を交わすうちに、興奮のあまり無意識に韓国語が飛び出すというシーンの撮影でした。キム・ヒョジンさんにとってはものすごい量の日本語のセリフを一気にまくしたてなければならないし、西島秀俊さんにとっては完璧な韓国語を使いこなさなければならないシーンです。とても普通は一気にワンカットで撮れるようなシーンではないのですが、夜景の明かりが消える前に撮影を終えなければならないという時間的な制約がありました。監督としてはただ奇跡を願うか、心残りがあっても適当なところで諦めるしかないという瞬間だったわけです。しかし、本当に信じられないことが起こりました。2人ともワンテイクで完璧に演じきったのです。私が「カット!」と叫んだ途端、日韓双方のスタッフ全員が同時に歓喜の声をあげ、2人の俳優にスタンディングオベーションを送った、素晴らしい瞬間でした。2人が受けていた精神的プレッシャーや、その瞬間のためにどれほどの準備をしてきたのかを考えたら、涙が一気に溢れました。この日は私の映画人生における最も幸せな日のうちのひとつです。

<b>-本作では、西島秀俊さんがカーチェイスやアクションシーンに挑んでいますが、これらのシーンを演出するにあたって気を付けたこと、こだわったことはありますか。</b>
私がアクションシーンを設定する際、最も重要視するのはアクションそのものの派手さよりも、そのアクションがキャラクターの感情を表現しなければならないということです。本作で最も難しかったのは、格好いいアクションを作り出すことではなく、むしろ格好悪いアクションを作り出さなければならないということでした。

アクションは専門外の平凡な男が見せるアクションの面白さとは何なのかを悩み、彼のもどかしさや緊迫した心境が詰まった情緒的なアクションにしようと思いました。そのようなコンセプトにすることで、ハリウッド式のアクションシーンと差別化したかったのです。

また、よくある最先端のCG効果などは使用しないで、アナログ式のアクションで1970年代のアメリカ映画やクラシックな映画のように見せたいと思いました。その結果、俳優本人が演じるべき部分が多くなったのですが、西島秀俊さんは、ほとんどのアクションをスタントマンなしで、直接演じてくれました。ある人は監督の楽しみは俳優を苦しめることだといっていました。私は何といってもただの俳優ではなくスター俳優を苦しめたのですから、その楽しみを満喫したと言えます(笑)。



映画『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』予告編
映画『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』予告編




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