判決後、報道陣の質問に答える原告側の弁護士=(聯合ニュース)
判決後、報道陣の質問に答える原告側の弁護士=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国の慰安婦被害者12人が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁が原告1人当たり1億ウォン(約950万円)の賠償を命じる判決を言い渡したことは、韓日関係に大きな影響を与えそうだ。日本政府の賠償責任を認めたことは、多くの韓国人にとって正しい判決だが、韓国大法院(最高裁)が日本企業に対し、強制徴用被害者への賠償を命じた判決により冷え込んだ両国関係にとっては逆風にならざるをえない。 徴用賠償判決は日本企業が被告であるため、解決策を模索する両国政府の努力があったが、慰安婦判決は被告が日本政府であるため、議論を始めることさえ難しいとの指摘もある。 韓国政府は司法判決に介入しないという原則を守りながらも、慰安婦問題を日本と外交的に解決するための方策もなく、対応に苦心することになりそうだ。 慰安婦被害者が日本政府に損害賠償を求め韓国の裁判所に起こした訴訟は数件あるが、判決が出たのは今回が初めて。判決を受け、日本政府は南官杓(ナム・グァンピョ)駐日大使を呼び、抗議した。 加藤勝信官房長官はこの日の定例会見で、判決は極めて遺憾であり、断じて受け入れることはできないと述べた。 日本政府側は、裁判所が他国を訴訟の当事者として裁判を行うことはできないとする国際法上の原則「主権免除」を主張し、訴えの却下を求めてきた。また日本側は、慰安婦問題について、2015年12月の同問題を巡る韓日政府合意で解決済みという立場だ。 一方、文在寅(ムン・ジェイン)政権は、この合意について、被害者の意見がしっかりと反映されていないなどの理由で、事実上の無効扱いにしている。 ただ韓国外交部はこの日に出した報道官論評で「政府は15年12月の慰安婦問題を巡る韓日政府の合意が両国政府の公式合意である点を確認する」とし、同合意は真の解決策にはならないものの今回の判決で破棄されないことを強調した。 日本が判決自体を否定する状況で韓国政府は司法判断を尊重するという原則を維持しているため、日本が納得する解決策を提示するのは容易ではない。 国民大の李元徳(イ・ウォンドク)教授は「強制徴用問題以上にとてつもない大きい影響が出ると思われるが、韓国政府は三権分立を尊重するしかなく、難しい立場に立たされることになった」と話した。  また今回の判決は韓米関係にも影響を及ぼす可能性がある。韓米日連携を重要視するバイデン米次期大統領が韓日関係の悪化に懸念を示し、関係改善を迫って圧力を加えてくることも考えられる。
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