ソウル市内のサムスン電子社屋(資料写真)=(聯合ニュース)
ソウル市内のサムスン電子社屋(資料写真)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国前大統領の朴槿恵(パク・クネ)氏らへの贈賄罪などに問われ、18日にソウル高裁で開かれた差し戻し控訴審で懲役2年6カ月(求刑懲役9年)の実刑判決を言い渡されたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長、李在鎔(イ・ジェヨン)被告(52)が再び拘束され、トップ不在となった同社は非常経営体制に突入した。  サムスンは、2017年2月に李氏が初めて収監された際、トップ中心の経営体制から系列会社ごとの専門経営に体制を転換した。 李氏が18年2月の控訴審で執行猶予付き判決を言い渡されて釈放された後も、李氏と各系列会社の最高経営責任者(CEO)は相互補完的役割を担い、「ニューサムスン」として発展を図ってきたが、再び経営トップが不在になるというサムスンにとって最悪のシナリオが現実となった。 過去のサムスンの経営構造は、経営トップとグループのコントロールタワーの役割を担う未来戦略室、系列会社の専門経営からなるトライアングル構造だった。 しかし、李氏が朴槿恵氏らによる国政介入事件に関与したことにより、未来戦略室は解体。新設された事業支援タスクフォース(TF)が系列会社間の調整を行ってきた。 李氏が再び収監されたことで、サムスンは当面の間、各系列会社が個別に危機に対応する計画だ。 李氏の最側近とされる鄭賢豪(チョン・ヒョンホ)サムスン電子社長が率いる事業支援TFがグループ全般を調整する求心点の役割を果たすとの見通しが出ている。ただ、一部では事業支援TFに対する厳しい視線もあり、積極的にグループのコントロールタワーの役割を果たすのは困難だとの見方が支配的だ。 事業支援TFは未来戦略室に比べ役割や権限などが大幅に縮小されたが、特別検察などから事実上、未来戦略室の復活ではないかとの指摘を受けた。 サムスンと財界では、コントロールタワーの組織図もない中で李氏が再び収監されたため、グループ全般にわたる問題を決定するのは難しくなるとみている。日常的な経営は各社のCEOが行えるが、大規模な投資の決定などは結局トップの判断となるためだ。  実際に、李氏が17年2月に収監されるまで毎週開かれていた社長団会議はその後中断され、李氏が最初に収監される3カ月前に自動車電装メーカーの米ハーマンを買収して以降、サムスンはこれまで大きなM&A(合併・買収)を行っていない。 サムスンは李氏の父の故・李健熙(イ・ゴンヒ)会長が08年4月、不正資金事件の責任を取って会長を辞任し、経営の第一線から退いた時も危機を迎えた。 健熙氏が10年3月に経営に復帰するまで、サムスンは専門経営者体制を敷いたが、その間に未来事業「5大新事業」の選定が遅れ、結果的に一部分野で中国企業が躍進することになったとされる。 財界関係者は「大規模な投資、人事などは経営トップと専門経営者が膝を交えて議論、決定するが、トップが拘束されれば意思決定や責任経営への支障が避けられない」とし、在鎔氏が前回収監された間にグローバル市場で競争力が弱化したとの指摘があったと述べた。 昨年10月に健熙氏が死去した後、在鎔氏が名実ともにグループトップとして独り立ちし、未来新事業の拡大など「ニューサムスン」として変化に注力していた中で収監されたことで、グループ全体の動力低下は避けられないとみられる。   李在鎔氏だけでなく、サムスンの主要幹部は国政介入事件に加え経営権承継を巡る疑惑、労組問題などでここ数年にわたり繰り返された捜査や裁判で一部が身柄を拘束された。 こうした状況に新型コロナウイルス感染拡大や米中貿易摩擦など内外の不確実性も重なり、既に正常な経営活動は事実上不可能だが、李氏が再び拘束されたことでサムスンは致命傷を負ったともいえる。 李氏の収監が韓国経済に及ぼす影響が大きいことから、判決の言い渡しに先立ち執行猶予が必要だとする嘆願が財界から相次いだが、この日再拘束されたことで徒労に終わった。
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