東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで舞台あいさつをおこなったポン・ジュノ監督、俳優ソン・ガンホ、サプライズゲストとして登場した草彅剛
東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで舞台あいさつをおこなったポン・ジュノ監督、俳優ソン・ガンホ、サプライズゲストとして登場した草彅剛
第92回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を制し、歴史的快挙を成し遂げた韓国映画「パラサイト 半地下の家族」。
日本でも、1月10日の全国公開から爆発的ヒットになっていたが、オスカー獲得で勢いを増し、2月23日時点で、興行収入32億円、観客動員230万人を超える大ヒットを記録中。日本で公開された韓国映画の中で、「私の頭の中の消しゴム」(30億円)を抜き、15年ぶりに歴代興行成績1位の記録を塗り替えた。

ソン・ガンホ の最新ニュースまとめ


2月23日(日)の記者会見に続き、24日(月・祝)には東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで舞台あいさつを行い、2人の大ファンだという草なぎ剛がサプライズゲストで登壇し、祝福ムードを盛り上げた。

映画上映後、盛大な拍手で迎えられたポン・ジュノ監督とソン・ガンホ。満員の客席を見渡したポン監督は「このように客席を埋め尽くしてくださり、本当にありがとうございます。アカデミー賞関連で、たくさん祝福を受けましたが、すでにその前から日本の観客の皆さんが劇場に足を運び、熱い反応をしてくださっていたことに、心から感謝しているし、うれしく思っています。日本の観客の皆さんはお目が高いです(笑)」とユーモアを交えてあいさつし、ソン・ガンホも「とても感謝しています。言葉や文化が違っても、お互いに共感できるのが映画の力だということを皆さんが実際に証明してくださり、大きな感動を受けました」と日本の観客に感謝した。

そして、「『パラサイト』、おめでとう!」という観客の掛け声で、ポン監督とソン・ガンホがくす玉を割るセレモニーで、特大ヒットを祝った。

日本で、同作が歴代韓国映画No.1となったことについて、ポン監督は「2000年初め、韓国映画が日本で活発に公開され、日本映画も韓国でたくさん公開され、関心を持たれていた時期がありました。十数年ぶりに、『パラサイト』が日本で反響を呼んでいるので、これをきっかけに、両国の映画ファンがお互いに関心を持ち、第2の交流時期がやってきたらいいなと思っています」とし、ソン・ガンホも「(くす玉の垂れ幕に)30億円突破と書かれていますが、数字よりも、監督もおっしゃったように、韓国の観客が日本映画を、日本の観客が韓国映画を見ながら、お互い触れ合い、共感し合うことが大切ではないかと思います。韓国でも以前から、巨匠と言われる日本の監督たちの作品が公開されてきましたし、最近では、是枝裕和監督、坂本順治監督、李相日監督の作品などが多くの方に愛されています。このように触れ合い、共感し合うのが重要なことで、『パラサイト』がそのきっかけになったようで、本当にうれしいです」と映画を通した両国の活発な交流に期待を寄せた。

また、アカデミー賞で見事4部門の受賞という快挙を成し遂げたとき、どんな気持ちだったかを聞かれたポン監督は「劇中、『無計画が最高の計画だ』というセリフが出てきますが、計画していたことではなかったのに、実際に賞をいただけて、うれしくもあり、戸惑いもありました。貴重な賞をいただけたので、光栄であったし、トロフィーは家に大切にしまってありますが、アカデミー賞以前に、米国、日本、フランス、メキシコなどたくさんの国で反響を呼んでいたこと自体、胸がいっぱいでした。この映画を通して、いろいろな国の観客と触れ合えたということが、賞を受賞したこと以上に大きな喜びでした」と語った。

また、ソン・ガンホが「受賞したときの映像を見ると分かると思いますが、アカデミー賞授賞式のとき、喜びを抑えていました。ポン・ジュノ監督のあばら骨を折らないように、うれしさを噛みしめていました」と話すと、「実はカンヌで賞を受賞したとき、(ソン・ガンホに)あばら骨を強く叩かれ、少しヒビが入っていたようなんです(笑)」とポン監督。ソン・ガンホは「だから、今回は首の後ろ、背中、顔を中心に抱擁しました」とニッコリ。大舞台でのエピソードを絶妙なやり取りで明かし、会場を爆笑させた。

そして、ここでなんと、「この映画をとても愛し、この大ヒットを喜んでくださっている方が駆けつけてくれました」という司会者の呼び込みで、スペシャルゲストとして草なぎ剛がサプライズで登壇!

会場もまさかの草なぎ登場にどよめく中、ポン監督とソン・ガンホに花束を渡した草なぎは、韓国語で「日本に来てくださってありがとうございます。アカデミー賞受賞、おめでとうございます。僕はポン・ジュノ監督とソン・ガンホさんの大ファンです!ソン・ガンホさんは世界中で一番尊敬している俳優さんです。僕が演技をするとき、いつもソン・ガンホさんだったらどう演じるだろうと考えながら、演技をしています。本当にきょうはお会いできて、とてもうれしです」と興奮気味に話すと、「最近、韓国語の勉強をする時間がなくて、韓国語を忘れてしまいました(笑)。通じてるのかな?」と照れていたが、ポン監督とソン・ガンホにはしっかり伝わっていた様子。

意外にも(?! )、2人とは今回が初対面だったという草なぎは「きょう初めてそこで会ったんです。そこの出入り口で(笑)。まさか出入り口で、ソン・ガンホさんとポン・ジュノ監督と会うとは思いませんでしたが、本当に光栄です」と感激しきり。

ソン・ガンホが「20年前から、チョナン・カン(草なぎ剛の韓国の芸名)さんが僕のことを好きでいらっしゃると聞いていたので、ぜひお会いしたかったんですけど、きょうついにお会いできて、記念すべき日になりました」と言えば、ポン監督も「チョナン・カンさんについては、さまざまな活動をしていたので、昔からよく存じあげていました。数年前、ソウルで香川照之さんと出演された舞台『ぼくに炎の戦車を』を見に行ったことがあります」と知られざる縁も明かした。

これまでポン・ジュノ監督の作品は、「スノーピアサー」以外、全て見たという草なぎ。「パラサイト」について、「一流のエンターテインメントになっていて、退屈するところがひと時もなかったです。それで、見終わった後に、あそこはどうだった、こうだったって話したくなるような作品で、しっかりと家族愛も描かれていて、またすぐに見たくなる作品でした」と絶賛すると、再び韓国語で、「僕が一番好きなシーンは、さっきも話に出ましたが、『無計画』というセリフを言うシーンです。僕が生きてきた人生も無計画なんで(笑)」とし、「計画を立てなければ、失敗することはないっていうことで、基本的に僕もノープランなんで(笑)。とても心に響くシーンでした」とエンジンがかかったように、まだまだ話は止まらない。

「ポン・ジュノ監督の作品、ソン・ガンホさんが出るこの2人のタッグは、『殺人の追憶』も好きなんですけど、そういう鬼気迫った部分でも、ブラックユーモアが効いているというか。こんな大変なときに、人って、もしかして、違うことを考えたりするのかなとか、そういうのがすごくリアルに感じるんですよね。だから、『パラサイト』はそういう人間誰しもが持っている喜怒哀楽っていう感情がいろんなところに散りばめられていて、好きな作品です。だから、全部好きですね~。リアリティがあるので」と熱弁をふるった。

さらに、草なぎは思い出したように、「あと、ソン・ガンホさんがインディアンの(羽帽子を)かぶってたじゃないですか。すごい似合いますよね~。あれ好きなんですよ。(ソン・ガンホは)赤だったじゃないですか。でも、パク社長(イ・ソンギュン)は黒で、ソン・ガンホさんにはやっぱり赤が似合うな~と思ったりして。あれは重要な小道具でもあったような気がするんですよね」と斬新な視点で、そのシーンを解説すると、「草なぎさんがそうおっしゃってくださったので、なんとなく、そんな意味もあったのかなというような気がしてきました(笑)」とポン監督。

ソン・ガンホも「赤が原始的な感じ。先住民のイメージがあったと思います。パク社長が使っていた黒は、侵略者のような意味があったような気がしますね」と真剣に答えると、「お~、ちゃんと僕の質問に答えてくれてる」とはしゃぐ草なぎ。

「ポン・ジュノ監督と僕がいままで一度も考えたことのなかったことをチョナン・カンさんがおっしゃってくださったので、本当にそうだなと思いました」というソン・ガンホの言葉に、草なぎは「ペコリ。ありがとうございます」と照れくさそうにし、「撮影当日、太陽が沈む前に早く撮らなきゃと、バタバタしていて何も考えていなかったんですが、きょう新たな脈略でそのシーンを整理してくださったので、映画がより豊かに感じられます。今後のインタビューでは、ぜひ引用したいと思います」というポン・ジュノ監督の言葉には、まんざらでもなさそうな表情を浮かべた。

司会者から「たくさん質問してくださって、ありがとうございます。もうそろそろお時間です」と声がかかった草なぎは「もう終わりですか?」と名残惜しそうにしながらも、ソン・ガンホ、ポン・ジュノ監督と握手、ハグをしてステージを後にした。

舞台あいさつの最後に、ソン・ガンホは「この映画は、どう生きたらいいのか、どう生きるべきなのかという共生に関する映画です。国境、言葉の壁を越え、皆さんが共感し、この映画を通して触れ合えるのは「パラサイト」という映画が持つ意味とよく合っています。心の中に長く残る映画になったらうれしいです」、ポン・ジュノ監督は「興行成績、多くのトロフィー、映画賞の受賞など、もちろんうれしいことですが、それ以前に、映画そのものや、俳優のセリフ、まなざし、カメラワーク、シーンといったものが、皆さんの記憶の中にずっと残っていたらいいな、という素朴な願いを持っています」とメッセージを伝えた。

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