文在寅大統領(左)と金正恩国務委員長による南北首脳会談が27日に軍事境界線のある板門店で開かれる。会談の標語は「平和、新たな始まり」に決まった(コラージュ)=(聯合ニュース)
文在寅大統領(左)と金正恩国務委員長による南北首脳会談が27日に軍事境界線のある板門店で開かれる。会談の標語は「平和、新たな始まり」に決まった(コラージュ)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】「分断と対立を乗り越え、平和の新たな歴史を記そう」――。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領がこう言及した南北首脳会談が来週に迫った。南北首脳会談は2000年6月と07年10月に続き3回目、11年ぶりの開催。再び冷え込んでいた南北関係を転換させる岐路であり、朝鮮半島の命運がかかる。

キム・ジョンウン の最新ニュースまとめ

 27日開催の南北首脳会談は「平和」が最も重要なテーマだ。朝鮮半島でのいかなる形の戦争であれ軍事的な行動であれ決然と反対し、恒久的な平和体制を築くという文大統領の構想に、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が応じた結果といえる。青瓦台(大統領府)は15日、首脳会談の標語を「平和、新たな始まり」に確定した。

 会談が南北分断の象徴の板門店で開催されること自体、休戦協定体制の不安定さを想起させ平和体制構築が急務であることを訴えるという意味を持つ。また、軍事境界線(MDL)より南の「平和の家」での開催は、北朝鮮の最高指導者が初めて韓国の地に足を踏み入れる歴史的な出来事となる。

 この会談はさらに、開催されれば史上初となる米朝首脳会談の「道しるべ」の役割も果たすとみられる。朝鮮半島最大の懸案である非核化達成と平和体制構築の礎を置くきっかけとして作用するという期待感も膨らむ。

 こうした歴史的な意味と重大さの中で、朝鮮半島問題の解決に向けた車の「ハンドル」を握る文大統領は、まさに不退転の覚悟をもって会談の準備に臨んでいる。アジアの火薬庫とされる朝鮮半島の構造的な問題を完全に解決し、世界史的な大転換を成し遂げるための二度とない機会をつかんだというのが、文大統領の認識だ。南北、米朝と、相次ぐ首脳会談の開催へ導いて対話の場を大きく展開させた文大統領には、平和と繁栄の朝鮮半島を次の世代に譲るという時代的な使命を成功させなければならないとの切迫感と重圧感がある。

 よって、首脳会談に臨む文大統領の対応と態度は、国内外で広がりつつある楽観的な見方とは異なり、あくまで冷静で節制されている。北朝鮮との関係を「ガラスの器」を取り扱うようにと表現した通り、極度に慎重な姿勢を崩さず、派手な見かけではない中身の充実した首脳会談となるよう、緻密に戦略を練っている様子がうかがえる。

 文大統領は首脳会談を準備する委員会の11日の会合で、「われわれにもたらされた機会が大きいだけ、挑戦も厳しいという認識を持ち、最後の瞬間まで緊張感と切実な思いで慎重に、着実に準備していかなければならない」と強調した。

 首脳会談に対する文大統領の基本的な見方と取り組み方は、史上初の南北会談と南北間の和解・協力に焦点を当てた過去2回の会談とは異なる。今回は、南北関係はむろん、非核化と平和体制という根本的な問題の解決を追求する多目的な窓口としての役割を果たす必要があるとの認識だ。南北、米朝首脳会談をワンセットと見なし、米朝間の仲裁役を自任する文大統領独自の位置付けといえる。

 まず南北関係をみると、直ちに画期的な関係進展を図るというよりは、首脳間の信頼醸成を土台に「平和の制度化」を構築することが要となる。文大統領は首脳間の直接通話を通じ随時に意思疎通を取れる体制を構築し、さらに首脳会談の定例化により、朝鮮半島全体の緊張を緩和させ和解と協力の関係を安定的に構築することを構想する。

 「結果」を導き出そうと焦らず、相互信頼を土台に平和を築く「プロセス」を始めるという意味を込めているようだ。文大統領は参謀らに「一度にすべての問題を解決しようという過剰な意欲で取り組むよりは、今回の南北首脳会談を機に、長らく断絶していた南北関係を復元し、平和と繁栄の朝鮮半島へ進むためのしっかりとした踏み石を置くという考えで臨んでほしい」と呼び掛けた。

 文大統領が過去2回の首脳会談とは異なり、就任1年足らずで会談に臨むことは、南北関係改善の安定的な推進と合意履行の実効性を高める上でも大きな意味を持つ。文大統領は南北関係の発展へ向けた首脳間合意に至れば、政権交代後も永続させ、国会批准により法制化を進める意志を示している。

 一方、この会談は史上初の米朝首脳会談に備えた地ならしの意味合いもある。両会談は非核化と平和体制という議題を中心に、内容的につながっているためだ。米朝首脳会談の議題をうかがう一種のリトマス試験紙であり、その結果次第で米朝会談の風向きも十分に変わり得る。

 南北、米朝首脳会談ともに成功した場合、その先は南北と米国の3者、これに中国を加えた4者、さらに北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議と、多国間協議のメカニズムを活性化させ、朝鮮半島問題の解決に重大な転機をもたらすとみられる。逆に非核化と平和体制問題で期待を下回る結果となれば、南北関係と米朝関係はいずれも悪化を免れず、これは朝鮮半島情勢を再び緊張と対立の渦に引き込みかねない。

 文大統領が南北、米朝首脳会談を通じ達成を目指すのは、▼朝鮮半島の完全な非核化▼恒久的な平和の構築▼南北関係の持続可能な発展――に集約される。これら三つの目標は前後の違いはあろうとも内容として緊密に結びついており、包括的に扱う必要がある。

 文大統領はこのうち非核化を最優先に掲げる。北朝鮮核問題の解決なくして平和の定着と南北関係の改善は不可能という確固たる認識があるためだ。

 究極的には北朝鮮と米国が解決すべき事案ながら、米朝間の根強い不信と取り組み方の違いを踏まえると、文大統領の仲裁の役割が大変緊要というのが外交関係者の見方だ。一括妥結を強調する米国と、段階的、同時的な取り組みを主張する北朝鮮との間で、文大統領は「包括的な妥結、段階的な履行」を柱とする非核化ロードマップ(行程表)を提示し、米朝の共通分母をそろえようと試みている。

 また、恒久的な平和構築は、非核化とコインの裏表のような関係にある。北朝鮮の完全な核放棄の措置に対する見返りとして提供され得る関係正常化や平和協定の締結、終戦宣言などは、平和体制の核心をなす要素だ。

 南北関係の持続可能な発展については、首脳会談の定例化とともに、国会の同意に基づく和解と協力の制度的な基盤を構築することに焦点を当てる見通しだ。南北関係発展の鍵である経済協力は、今回の会談では優先順位が比較的低い議題として扱われると予想される。

 第1回南北首脳会談の共同宣言、第2回会談の首脳宣言に続き、今月の首脳会談で新たな宣言の採択が見込まれる。平和構築と南北関係発展に対する両首脳の強い意志が具体的な合意の形で示されることになりそうだ。ただ、非核化問題が宣言に入ったとしても、交渉が必要な詳細な内容は米朝首脳会談にゆだねられる可能性が高い。

 朝鮮半島に真の「平和の春」が訪れるか、世界中の目が27日の南北首脳会談に注がれる。


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